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脳脊髄液減少症の既知と未知について

No.5084 (2021年10月02日発行) P.50

藍原康雄 (東京女子医科大学脳神経外科准教授)

高橋浩一 (山王病院脳神経外科部長)

登録日: 2021-10-03

最終更新日: 2021-09-29

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  • 脳脊髄液減少症の既知と未知についてご教示下さい。
    山王病院・高橋浩一先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    藍原康雄 東京女子医科大学脳神経外科准教授


    【回答】

    【髄液が減少する病態の髄液減少症は,ブラッドパッチが有効である】

    脳脊髄液漏出症や低髄液圧症候群といった髄液が減少する病態(以下,髄液減少症)は,起立性頭痛を主訴とし,めまい,耳鳴り,倦怠感,視覚異常など多彩な症状を呈します。治療法であるブラッドパッチ(硬膜外自家血注入療法)は2016年に保険収載されました。

    髄液減少症は,慢性硬膜下血腫を合併するなど,時に生命を脅かす病態です1)。また,小児期の慢性頭痛,不登校児,起立性調節障害や体位性頻拍症候群の診断で治療効果が乏しい症例の中に髄液減少症が存在し,ブラッドパッチが有効であることがわかってきました2)。近年,小脳失調,感音性難聴を主症状とする脳表ヘモジデリン沈着症が硬膜欠損部からの髄液異常漏出によって生じるとする報告があり,さらに注目される疾患概念となっています3)

    髄液減少症の症状出現機序に関して,髄液減少に伴う脳下垂により,脳脊髄神経や,疼痛感受性を有する脳硬膜,血管が牽引され,脳神経症状や起立性頭痛など多彩な症状が生じると理解されています。また脳室の形態変化が,多彩な症状を呈する脳室周囲症候群の原因となる可能性について指摘されています4)。一方で,高次脳機能障害や尿失禁,不随意運動,味覚障害などの症状を呈し,ブラッドパッチにて改善する症例は稀ではありません。しかし,これらの症状発現や治療効果の機序に関して,現状では適切な説明が困難であり,髄液の未知なる機能があるはずだと考えています。

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