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【識者の眼】「PMDAのジェネリック医薬品の審査」藤原康弘

No.5082 (2021年09月18日発行) P.61

藤原康弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)

登録日: 2021-08-18

最終更新日: 2021-08-18

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我が国の医療費は、2018年度には43兆円強となり、この30年で2倍以上に右肩上がりで増加し続けている。国民皆保険制度維持のため、医療費の増加抑制は喫緊の課題である。年々高額な新薬が登場する一方で、政府は、ジェネリック医薬品の市場シェア80%という具体的な数値目標を示し、薬剤費の膨張を抑えこもうとしている。

ジェネリック医薬品は、先発医薬品の主に特許終了後にそれと品質、有効性、安全性が同等である物として厚生労働大臣が承認する医薬品である。特許切れの時期などに一斉にゾロゾロ発売されることから、巷では「ゾロ品」とも言われていた。6月と12月の2回薬価収載され、一斉に市場に出てくる。ジェネリック医薬品は、新薬のような研究開発費等が少なくて済むため、安価な価格で提供することが可能となる。医薬品の公定価格『薬価』が、先発医薬品の4割以下のジェネリック医薬品もある。しかし、現場では「効かない」という声があるなど、安かろう悪かろう感があることも否めない。

PMDAでは、ジェネリック医薬品の審査も行っている。例えば、先発品とジェネリックが血中濃度などで生物学的に同等であるかなど、国際的な基準に基づく審査はもとより、連綿と受け継がれてきた科学技術に裏打ちされた手法により審査している。専門スタッフの高度で迅速な審査により、現場の品質に対する不安払拭に応えようとしている。また、ジェネリックならではの工夫も認めている。例えば、服用困難な大きな錠剤の小型化、OD錠(口腔内崩壊錠)の開発など、先発品にはない製剤の開発にも対応している。PMDAも審査を通じて、ジェネリック医薬品の普及に貢献している。医師にとっては、ジェネリックの選択は容易ではないと思うが、どれも同じ水準の審査を受けている。

昨今、製造過程での成分の取違いによる健康被害の発生、頻発する自主回収による供給不安など、ジェネリック医薬品全体の信頼をも損なうような憂慮せざるを得ない事態が続いている。皆様に安心して使っていただくため、ジェネリック医薬品の審査体制の強化や高度化にPMDAも積極的に取り組み、ジェネリック医薬品の信頼回復に寄与すると同時に、透明性の高い情報の適切な広報にも努めていきたいと考えている。企業文化の問題も指摘されるジェネリック業界も医療・患者目線で自浄作用を願いたいところだ。

藤原康弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)[薬事]

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