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【識者の眼】「子供向け講義を通じた地域への感染対策の普及」川越正平

No.5077 (2021年08月14日発行) P.62

川越正平 (あおぞら診療所院長)

登録日: 2021-08-02

最終更新日: 2021-08-02

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2020年10月17日号本欄で紹介したまちっこプロジェクトについて、続報をお伝えする。2019年度には22校で「いのちの尊さ」または「認知症」をテーマとする出前授業を行ったが、コロナ禍発生に伴い、2020年度は面前での講義が困難となった。そこで、新たに「感染症」のコンテンツを構築し、そのDVD教材を作成する方針とした。市に提案したところ、例年のテキスト印刷費に加えて、DVD教材の作成に係る費用の予算化が実現した。感染症に関する啓発授業に活用してもらうことを意図して市内全65校にDVDを数枚ずつ、カラー印刷のテキストを小学5年生から中学3年生までの約2万人に配布した(ホームルームの時間で分割して活用することもできるように、4つのパートに切り分けて制作)。

子どもたちに伝えたい内容として、①生活の中で役立つ感染予防(知識に基づき“正しく恐れ”つつ、安全に行動する)、②人生会議のすすめ(もし家族が感染したらどうするかを話し合う)、③地域における助け合い(差別・偏見、噂に加担しない、エッセンシャルワーカーについて)、④かかりつけ医推奨(いざというときに頼りになる相談相手を持つ)という4つの内容を柱とした。

本プロジェクトは、子どもたちへの知識伝授だけではなく、行動変容を促すことを目的としている。加えて、授業で学んだ内容を周りの大人に伝えることを「宿題」としてお願いすることで、親、祖父母、近隣住民などへの波及効果を意図している。また、授業から着想を得たイスラストと標語を募集している。

授業実施の報告があったクラス(計32校6360名)の4893名(77%)から宿題の提出があり、2320作品(36%)の応募があった。保護者の方に向けて、宿題の裏面に「がん治療のため入院中の祖父母が治療の余地がないと診断された、本人は『もう家に帰りたい』と言っていると仮定して人生会議を開催してください」とお願いしたところ、数多くの回答が返送された。宿題への取り組みや心のこもった応募作品からは、教育効果に確かな手応えを感じている。

地区医師会として子どもを対象とする健康啓発活動に取り組み始めてから7年目になる。コロナ禍における感染対策やワクチン接種の啓発は、子どもに限らずすべての住民に伝えるべき内容と言える。地域医療に従事する医師は、今後医療機関を受診する患者に診療を提供するにとどまらず、診察室から飛び出して地域住民を対象とする啓発活動にも取り組むべき時代だと考える。

川越正平(あおぞら診療所院長)[まちっこプロジェクト][感染症][DVD教材][人生会議][健康啓発活動]

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