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【識者の眼】「地域包括支援センターが人生会議に取り組むことの意義について〜エンディングノートを活用して〜」岡江晃児

No.5074 (2021年07月24日発行) P.59

岡江晃児 (杵築市医療介護連携課兼杵築市立山香病院・ソーシャルワーカー)

登録日: 2021-07-09

最終更新日: 2021-07-09

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私が現在ソーシャルワークしている大分県杵築市では、多くの国民が認知している「終活」という言葉を活用し、2018年度から「きつき終活応援プロジェクト」として様々な事業を展開し、元気な時から「死生」や「人生会議」について考える文化の構築を目指している。

杵築市では医療機関だけでなく、様々な機関が『エンディングノート』を活用しながら人生会議を行う土壌を構築している。その中の一つとして、地域包括支援センターのソーシャルワーカー等が個別支援をしていく中で実践している。地域包括支援センターには、日常生活で様々な困りごとを抱える地域住民の総合相談窓口としての機能がある。例えば、「今度、入院する予定だけど、家族は遠方なので同意書等はどうしたらよいのか」「自分がもし大きな病気になって急に亡くなったら、私の土地や財産はどうしたらよいのか」「私は今80歳で、終活しないといけないと思っているのだけれども何から手をつけたらよいかわからない」等の相談が寄せられている。その際に当市の地域包括支援センターでは、今後の人生をどう過ごしていくかという思いを整理するツールとして『エンディングノート』を地域住民に渡して、その人の人生に寄り添っている。当市のエンディングノート「きつきネバーエンディングノート」は、「人生最終段階の医療・ケア」の項目だけでなく、「わたしのこと(おもいで・これからのやりたいこと)」「葬儀・お墓・遺言書」「財産」「大切な人へのメッセージ」の項目があり、まさしくその人の人生や価値観について考えるよいツールとなっている。そのツールを元に、地域包括支援センターは大切な人と話し合う「人生会議」を始めるきっかけを提供したり、病院等との連携の際にその人の人生や価値観を共有している。

人生会議は人生の最終段階における医療・ケアについて話し合うことが論点になりがちだが、医療・ケアはその人の生活にとっては一部であり、その人の人生や価値観を共有するプロセスだと考える。よって、日常から地域住民の生活に密着し、総合相談窓口の機能を担っている地域包括支援センターが『エンディングノート』を活用しながら人生会議に取り組むことは、非常に意義がある。

岡江晃児(杵築市医療介護連携課兼杵築市立山香病院・ソーシャルワーカー)[人生会議][エンディングノート][地域包括支援センター]

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