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硝子体出血[私の治療]

No.5072 (2021年07月10日発行) P.44

井上 真 (杏林大学医学部付属病院眼科(アイセンター)臨床教授)

登録日: 2021-07-12

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  • 硝子体出血を起こす原因は多様で,網膜裂孔,裂孔原性網膜剝離,糖尿病網膜症,網膜静脈閉塞症,加齢黄斑変性症(特にポリープ様脈絡膜血管症),網膜細動脈瘤,くも膜下出血,外傷,ぶどう膜炎,後部硝子体剝離などがある1)。軽度の硝子体出血であれば飛蚊症を伴うが,重度の硝子体出血は視力障害となる。

    ▶診断のポイント

    硝子体出血自体は自然吸収することがあるが,自然に経過をみてよい状態か,緊急で手術が必要な状態かを見きわめることが重要である。外傷や眼球内異物を疑う場合は問診が重要となる。網膜剝離や眼球内異物が疑われる場合は緊急で硝子体出血を除去する硝子体手術を行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    まずは経過観察してよいか,硝子体手術にふみきるかの判断を行う。硝子体出血があると網膜の状況が判断しづらいため,超音波検査で網膜剝離の有無,外傷などでは眼球内異物,眼球破裂の有無を判断する。硝子体出血で網膜剝離を合併していて手術を行わずに経過をみた場合,硝子体出血が軽減した頃には眼内増殖が生じて難治性網膜剝離である増殖硝子体網膜症になっていることが多い。この場合には網膜の障害も強く,手術を行っても視力予後は不良である。網膜剝離か網膜裂孔があれば緊急に硝子体手術を行うが,網膜剝離か網膜裂孔を疑った場合であっても,できるだけ早期に手術を行ったほうが視力予後はよいと考えており,積極的に手術治療を勧めている。

    眼球内異物や眼窩内異物が疑われる場合にはCT検査も重要である。金属の異物を疑った場合にはMRI検査は禁忌であるが,異物によってはCT検査でうまく描出されない場合もあり,その場合はMRI検査が有用である。眼球打撲の後に眼内が透見できないような強度の硝子体出血がある場合は,眼球破裂となっている可能性も考える。眼球破裂では眼圧は著しく低下している場合が多い。この場合も超音波検査は有用なことが多いが,眼球の虚脱が著しい場合には判定が困難なこともある。このような重症の眼球破裂ではCT検査が有用である。眼球破裂がある場合は,眼球が虚脱していたり,強膜の像が途切れていたりする。この場合は脈絡膜出血を伴うことが多い。

    【治療上の一般的注意】

    簡便ではあるが,対光反応をよく調べる。相対的求心路瞳孔反応障害(relative afferent pupillary defect:RAPD)が陽性であれば,硝子体出血で眼底の様子がわからなくても,黄斑部の障害や視神経の障害を示唆する。また,眼底鏡の光を患眼に投影して患者の自覚で中心が暗いという症状があれば,黄斑部の障害を疑う。黄斑部の障害が疑われ急激に視力が低下した場合は,早めに手術治療を予定する。

    硝子体出血の原因がわからない場合は僚眼の所見が重要であることがある。糖尿病網膜症やぶどう膜炎では僚眼にも眼底所見があることが多い。網膜血管の動脈硬化性変化が強い場合や高血圧の既往,高齢者では網膜細動脈瘤破裂による硝子体出血を疑う。くも膜下出血に続発する硝子体出血は急激な脳脊髄圧の亢進により生じると考えられている。急性期には全身状態が不良であるため,全身状態をみながら治療について検討する。

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