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特集:糖尿病患者をサルコペニア・フレイルにしないためのコツ

No.5071 (2021年07月03日発行) P.18

荒木 厚 (東京都健康長寿医療センター副院長 )

登録日: 2021-07-02

最終更新日: 2021-06-30

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荒木 厚
1985年京都大学医学部大学院卒業。英国と米国に留学。東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科部長を経て,’19年より副院長。糖尿病と老年病の専門医,指導医。老年医学が発展し,フレイルを考慮した高齢者診療の普及を願っている。

1 サルコペニア・フレイルの診断・頻度・危険因子・予後

・サルコペニアの診断の定義は,骨格筋量低下かつ筋力低下または身体機能低下。
・一般の診療所において,握力低下(男性28㎏未満,女性18kg未満)または5回椅子立ち上がり時間延長(12秒以上)の場合,サルコペニアの可能性ありと判定。骨格筋量を測定しなくても,この時点から運動や食事などによる介入を行う。
・身体的フレイルの指標は,改訂J-CHS基準において,体重減少,筋力低下,歩行速度低下,疲労感,身体活動量低下の5項目中3項目以上。また,CGAに基づいたフレイル指標:基本チェックリストなど。
・糖尿病は,フレイルが約1.48倍,サルコペニアは1.52倍起こりやすい。
・サルコペニアとフレイルの危険因子は,インスリン抵抗性・分泌低下,HbA1c高値(8.0%以上),動脈硬化危険因子,低栄養,身体活動量低下など。
・フレイルでは重症低血糖,HbA1c低値(7.0%未満)なども危険因子。
・糖尿病患者にフレイルが合併すると死亡,入院,認知機能障害,要介護のリスクが上昇。

2 サルコペニア・フレイルを考慮した食事療法と運動療法

・適正なエネルギー量を摂取し,極端なエネルギー制限を避ける。
・十分なタンパク質を摂取する:少なくとも1.0~1.2g/kg体重/日のタンパク質を摂取。
・ロイシンが多い肉,魚,乳製品,大豆製品,卵などを組み合わせて摂取する。
・ビタミン(D,A,B群)とミネラルを十分に摂取する。
・食品の種類の多様性を高める。
・レジスタンス運動:インスリン抵抗性を改善し,筋力を増加させ,HbA1cを低下させる。
・市町村での運動教室,「通いの場」,介護保険のデイケアの利用や椅子を使ってのスクワット:少なくとも週2回以上を行う。
・多要素の運動:柔軟性運動,有酸素運動,バランス運動を組み合わせ,レジスタンス運動の強度を強めていく運動。
・多要素の運動はフレイルを改善させるだけでなく,認知機能にも好影響。

3 サルコペニア・フレイルを考慮した薬物療法

・低血糖の起こりにくいものを中心に薬剤選択を行う。
・SGLT2阻害薬,高用量メトホルミン,GLP-1受容体作動薬では,体重減少によるサルコペニアに注意する。
・インスリン分泌が低下している場合にはインスリン療法を考慮。
・メトホルミンの使用では,eGFRで腎機能を評価して用量調節を行う。
・服薬アドヒアランスの低下がある場合は治療の単純化を行う:①服薬数や回数を減らす,②服薬のタイミングを統一する,③一包化する(SU薬は除く),④配合剤の利用を考慮する。
・2型糖尿病患者の複数回のインスリン注射を,経口薬の併用により,①1日1回の持効型インスリン,②週1回GLP-1受容体作動薬などに変更する。

4 血糖コントロール目標設定と高齢者総合機能評価

・高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)は,認知機能とADLの評価に基づいてカテゴリー分類し,低血糖リスクが危惧される薬剤の使用の有無を考慮して設定する。
・DASC-8によってカテゴリー分類を簡易に行うことができる。
・カテゴリーの段階が進むにつれて,フレイル,認知症,うつ傾向,低栄養,服薬アドヒアランス低下の頻度が増加する。
・カテゴリーⅡ以上ではフレイルを考慮した運動療法,社会参加,食事療法,治療の単純化を行う。
・カテゴリーⅢでは減薬・減量の可能性を考慮する。

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