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高血圧網膜症[私の治療]

No.5068 (2021年06月12日発行) P.45

石羽澤明弘 (北見赤十字病院眼科部長)

登録日: 2021-06-14

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  • 眼,特に網膜は動静脈を直接観察できる唯一の組織であり,高血圧による血管障害の眼底への表現型が高血圧網膜症である。視力障害を起こさないケースが多数であるが,網膜細動脈,静脈に種々の変化が生じるため,高血圧網膜症の所見から,虚血性心疾患や脳血管疾患,腎疾患など全身性の病変を類推することができる。このため,高血圧網膜症の評価は重要である。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    多くの場合は視力障害を呈することはなく,無症状である。一方で,黄斑虚血や黄斑浮腫,漿液性網膜剥離などを生じると視力低下を生じる。適切な治療がなされなかった場合は,不可逆的な視力障害を残すことがある。

    【検査所見】

    眼底検査所見から分類として,Keith-Wagener-Barker分類(表1)やScheie分類が一般的に用いられている。前者が簡便ではあるが,後者は,高血圧による細動脈の血管攣縮性変化(H)と慢性的な硬化性変化(S)をわけて評価できる。

     

    〈血管攣縮性変化〉

    腎性高血圧や妊娠高血圧症候群などの若年者に急激に現れる二次性高血圧で認められることが多い。血管平滑筋の機能的収縮による網膜細動脈の狭細化,口径不同がみられる。血管張力亢進が高度の場合,網膜血管の内側網膜血管血液関門が破綻して血管透過性が亢進し,網膜出血,硬性白斑,網膜浮腫が起こり,また循環不全から軟性白斑,乳頭浮腫などが起こる。血圧上昇が著しい場合,脈絡膜循環系にも障害を生じることがあり(高血圧脈絡膜症),限局性脈絡膜梗塞による網膜色素上皮の黄色調変化(Elschnig’s spot)を認め,時として漿液性網膜剝離を生じる。

    これらの変化は可逆的であるが,血圧の程度,病変の進行期間によっては重症化する。

    〈細動脈硬化性変化〉

    血圧亢進の持続期間を主要因として発生,進行する変化であり,血管平滑筋の変性や壊死,線維性肥厚などによる細動脈内腔の狭窄である。慢性に経過し,高血圧の大部分を占める本態性高血圧でみられることが多い。動脈血柱反射の増強(銅線動脈,銀線動脈)や動静脈交叉現象(静脈の先細り,塞ぎ止めなど)を認める。

    これらの変化は,眼底検査(眼底写真)でも観察は可能であるが,網膜の浮腫などの診断には光干渉断層計(OCT),循環障害の把握には蛍光眼底造影検査,OCT angiographyも有用である。また,重症度の分類として,最近の疫学研究に基づいたWong-Mitchell分類(表2)も有用であり,網膜症の重症度に対応した全身のリスクファクターを考慮していくべきである。

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