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低体温症[私の治療]

No.5062 (2021年05月01日発行) P.74

高氏修平 (旭川医科大学救急医学講座)

登録日: 2021-05-02

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  • 低体温症は深部体温が35℃以下に低下した状態とされ,寒冷環境や疾病などが原因となり発症する。日本救急医学会が実施した低体温症に関する全国調査1)によると,わが国の低体温症の特徴として高齢,屋内発症が多いことが指摘されている。中等度~高度低体温症では死亡率が高く,その治療を理解しておくことは重要である。
    低体温症の治療は復温治療が中心であるが,体温の重症度により選択される復温法は異なる。特に高度低体温症(28℃以下)では復温中に心室細動が起こり,体外式膜型人工肺(ECMO)を用いた治療が必要となることがあるため,あらかじめ高次医療施設への搬送を考慮しておく必要がある。さらに復温治療と並行し,低体温となった原因精査とその原疾患に対する治療についても開始する必要がある。

    ▶病歴聴取のポイント

    いつから低体温の状態なのか,現場の状況,低体温症の背景にある疾患や薬物,外傷の有無について患者本人,家族,救急隊からポイントをおさえた病歴聴取を行う。特に服薬状況(抗不安薬・睡眠薬の使用や経口糖尿病薬などの内服歴)の確認は重要である。

    日本救急医学会による低体温症の全国調査(Hypothermia STUDY 2018)の結果では,疾病(75%),外傷(12%),アルコール(6%)が主要な低体温症の原因であった。また,疾病のうち,感染症,脳血管障害,低栄養,低血糖が主要な低体温症の原因疾患として挙げられた。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    通常の体温測定部位である腋窩温では正確な体温測定ができない。このため,深部体温(直腸温,膀胱温,食道温など)の測定が望まれる。なお,鼓膜温の測定は低体温症では適さない。
    パルスオキシメーターを用いて酸素化をモニターする場合には,指先よりも耳介や前額部が適している。
    高度低体温症(28℃以下)では,経過中に不整脈(心室細動)を起こすことがあるため,復温が完了するまで心電図モニタリングを継続する。

    低体温症では以下のように,体温の重症度により臨床症状が異なることを理解しておく。
    ・軽度(32~35℃):シバリングの出現や判断力の低下,頻呼吸や頻脈がみられる。
    ・中等度(28~32℃):シバリングの消失,意識レベル低下,心拍数低下や不整脈の出現がみられる。
    ・高度(28℃以下):昏睡,徐脈,心室細動が出現し,呼吸停止,心停止に至ることがある。

    【身体診察】

    濡れている衣服は取り除き,特に高齢者では褥瘡や外傷が隠れていないか注意して診察する。四肢末端の凍傷の有無も確認する。
    診察時に過度な侵襲を加えることで不整脈を誘発することがあるため,愛護的な診察を心がける。

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