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咳・痰[私の治療]

No.5062 (2021年05月01日発行) P.36

垣内大樹 (慶應義塾大学医学部救急医学教室)

登録日: 2021-04-29

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  • 咳嗽と喀痰が生じる病態を系統的に鑑別し,病態特異的な治療を検討する。

    ▶病歴聴取のポイント

    咳嗽の持続期間で急性咳嗽(3週間未満),遷延性咳嗽(3週間以上8週間未満),慢性咳嗽(8週間以上)と大別する。急性咳嗽では気道感染症,遷延性・慢性咳嗽では咳喘息やアトピー喘息,感染後咳嗽などを疑う。

    喀痰を伴う湿性咳嗽と伴わない乾性咳嗽にわけ,喀痰の性状(粘液性,膿性,血痰)を聴取する。症状増悪寛解因子,好発時間帯,併存症状(発熱,胸痛,浮腫,体重増減),シックコンタクト,既往/内服歴,喫煙歴,職歴,渡航歴は診断の一助となる。特に45歳以上の喫煙者で新規症状がある場合や,55歳以上で30pack-yearsの喫煙歴がある場合は精査を要する。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    診察前に感染防護具を検討する。患者との接触を伴う際は標準予防策を講じ,結核やCOVID-19,麻疹など空気感染する疾患を疑う際は,患者にサージカルマスク,医療従事者にN95マスク,アイプロテクション,ガウン,手袋を検討する。

    SpO2低下,意識障害,血圧低下がある場合は緊急処置を要する。qSOFAで敗血症を疑う。皮膚所見(チアノーゼ,蕁麻疹)で呼吸不全やアナフィラキシーの関与を察知する。

    気道狭窄は緊急性が高く,吸気時喘鳴(stridor)や発声困難,嗄声,気道異物に注意する。呼吸音で断続性ラ音(coarse crackle,fine crackle)の際は肺炎や気管支炎,連続性ラ音(wheeze,rhonchi)の際は喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD),心不全を疑う。頸静脈怒張や過剰心音(Ⅲ音,Ⅳ音),四肢浮腫は心不全の可能性を高める。犬吠様咳嗽〔クループ(声門下喉頭炎)〕や吸気性笛声〔レプリーゼ(百日咳)〕は疾患に特徴的である。

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