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前置胎盤・低置胎盤[私の治療]

No.5061 (2021年04月24日発行) P.42

北村亜也 (杏林大学医学部附属病院産科婦人科)

登録日: 2021-04-26

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  • 前置胎盤(placenta previa)とは,胎盤が子宮壁下部に付着し,組織学的内子宮口の全部もしくは一部を覆う状態をさす。頻度は全分娩の0.26~0.57%と報告されているが,近年の妊娠の高年齢化,不妊治療の普及,帝王切開分娩率の上昇に伴い,前置胎盤は増加傾向にある。また,既往の帝王切開創を覆う前置胎盤の場合,胎盤の絨毛組織が子宮筋層内へ浸潤することがあり,前置癒着胎盤と呼ばれる。前置胎盤や前置癒着胎盤では帝王切開時に大量出血の危険性が高く,胎盤の付着位置や癒着の有無を含めた詳細な術前診断の上,麻酔科や新生児科などと連携した十分な準備およびインフォームドコンセント,輸血や自己血貯血の用意といった大量出血時の対応を整えておく必要がある。

    ▶診断のポイント

    前置胎盤・低置胎盤の診断および分類には,経腟超音波断層法が有効である。胎盤は子宮筋層と比較し輝度が高く均一な充実性エコー像を呈する。妊娠初期に内子宮口上に胎盤を認めた症例であっても,子宮の増大や子宮下節の進展,開大に伴い子宮口-胎盤辺縁の位置関係が変化し,前置胎盤ではない場合があるため,診断時期は妊娠24週以降が望ましい。大量出血をきたした症例は播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome:DIC)の合併,多臓器機能不全のリスクが高く,ICUの整備された産科高次施設での管理が推奨されるため,妊娠31週末までには確定診断を行い,分娩施設を決定する必要がある。さらに,診断が確定した際には癒着胎盤ではないかを鑑別する。

    前置胎盤・低置胎盤は以下のように分類される(諸外国では低置胎盤も前置胎盤に含まれている)。

    ①全前置胎盤(total placenta previa):胎盤が内子宮口を完全に覆うもの。子宮口を覆う胎盤辺縁から内子宮口までの最短距離は2cm以上である。

    ②部分前置胎盤(partial placenta previa):胎盤が内子宮口の一部を覆うもの。子宮口を覆う胎盤辺縁から内子宮口までの最短距離は2cm未満である。

    ③辺縁前置胎盤(marginal placenta previa):胎盤の下縁が内子宮口縁に達しているもの。

    ④低置胎盤:胎盤は内子宮口を覆っていないが,胎盤辺縁と内子宮口の最短距離が2cm以内のもの。ただし,妊娠後期の子宮下節の伸展に伴い最短距離の計測値は変わりうるため,直近の所見をもって臨床診断を下す。

    一般的に,無症状で経過することも多いが,妊娠中期以降の疼痛を伴わない性器出血(警告出血)を認める症例では,原則として入院管理を要する。また,児の下降が妨げられることによって,胎位異常を伴うことがある。

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