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【識者の眼】「通所介護における要介護者の巡回接種」川越正平

No.5063 (2021年05月08日発行) P.93

川越正平 (あおぞら診療所院長)

登録日: 2021-04-16

最終更新日: 2021-04-16

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新型コロナワクチン接種について、市区町村では地域の実情に応じて集団接種や個別接種、高齢者施設の巡回接種を検討している。自宅で療養する要介護者については、当初インフルエンザワクチンと同様に訪問診療時の接種が想定されていたが、話はそう簡単ではないことがわかってきた。

ファイザーのワクチンの英国添付文書に「溶解後は自動車で運搬してはいけない」とあるように、mRNAワクチンが不安定な物質であり、溶解後の運搬による効果減弱の恐れは払拭しきれない。さらに、自宅で暮らす要介護者のうち在宅医療を受けているのは一部(15%とも言う)に過ぎず、1人30分の健康観察を行いつつ接種する形では著しく非効率である。

人口50万の松戸市には要介護者が2.25万人おり、施設居住者を除く1.5万人の接種が問題となる。家族の介助等により集団接種会場や医療機関に赴ける方には最も効果が確実な方法としてそれを推奨する。しかし、赴けない要介護者の場合、移送サービスの確保に困難を極める。そこで、通所介護における巡回接種についてロジスティクスを構築した(当市には広域型事業所が81カ所、定員18名以下の地域密着型が75カ所あり、5435人の利用者がいる)。

介護支援専門員の協力を得て、担当利用者ごとに実現可能な接種場所を検討してもらう。その結果を通所介護事業所ごとに分類し、より多くの接種を目指して、医師の協力を確保しやすい曜日等への利用日振替を含め、利用定員を考慮しつつ、特定曜日接種者リスト(仮)を作成する。多くの候補者が挙がった事業所・曜日の順に、巡回接種協力医リストとのマッチングを図り、担当医師を決定する。試算の結果、広域型6割、地域密着型5割の約3000人に接種するために必要な医師は120人/日と推計した。この松戸市医師会のノウハウは、同じ課題に取り組む他市町村に喜んで提供する用意がある。

集団・個別・巡回のベストミックスと適材適所の協力医師確保が鍵となる。例年インフルエンザワクチンを接種している医療機関には、個別接種にご参画いただきたい。個別接種を担当しないことになる小児科医はもちろん、眼科や精神科など経験の乏しい医師や研修医も集団接種会場には出務できる。薬剤師の協力も大歓迎である。高齢者診療や在宅医療経験を有する医師は、その多寡にかかわらず、巡回接種への協力を優先してほしい。ワクチン接種の最優先対象は施設入居者であり、最難関が自宅に暮らす要介護者だと認識し、実情に合った接種体制を構築できるかどうかが、地域の重症化抑制の成否を分ける可能性がある。

川越正平(あおぞら診療所院長)[新型コロナワクチン][巡回接種][要介護者][通所介護]

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