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内科学会「新型コロナ特別シンポ」詳報:治療薬・ワクチン巡り議論、臨床現場での「アビガン」使用に批判も【Breakthrough 医薬品研究開発の舞台裏〈特別編〉】

No.5060 (2021年04月17日発行) P.14

登録日: 2021-04-13

最終更新日: 2021-04-13

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日本内科学会総会・講演会が4月9~11日、都内で開かれ、最終日の11日に「新型コロナウイルス特別シンポジウム」が行われた。その中で国立国際医療研究センター(NCGM)の杉山温人氏は、レムデシビルの早期導入やハイフローセラピーの積極活用を特徴とするNCGMのCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)治療フローチャートを紹介。国立感染症研究所の松山州徳氏は、効果の検証が十分になされないままCOVID-19患者に「アビガン」を使用し続ける日本の現状に強い問題意識を示した。治療薬・ワクチンの話題を中心にシンポの模様を紹介する。

内科学会の特別シンポは、COVID-19の疫学・対策・治療などこれまで1年間の日本の対応を振り返り、課題を整理する目的で行われた。

臨床医の立場から治療について発表したのはNCGM病院長の杉山氏と防衛医大教授の川名明彦氏。

 

 

「ハイフローセラピー」の普及を

杉山氏はNCGMのCOVID-19治療フローチャート(図表1)を示した上で、「COVID-19診断後、酸素投与する患者や、酸素投与がなくても肺炎像があり重症化リスクがある患者にはレムデシビルを使っている。ハイフローセラピーも多用している」と述べ、NCGMでは抗ウイルス薬レムデシビル(商品名:ベクルリー)の早期導入、ハイフローセラピー(高流量鼻カニュラ酸素療法)の積極的活用を進めていることを報告。

杉山氏は「ハイフローセラピーは非常に高いFiO2(吸入中酸素濃度)を確保することができる。感染を広める懸念があるということで(全国的には)十分に普及していないが、我々は積極的に取り入れ、(2021年3月末のデータで)39例中29例(74%)で挿管回避ができている。院内感染はまだ起きていない」として、特にハイフローセラピーの有効性を強調し全国的に普及させるべきとの考えを示した。

酸素投与不要例に推奨できる薬がない

防衛医大の川名氏は、NIH(米国国立衛生研究所)とCDC(米国疾病予防管理センター)が作成しているCOVID-19治療ガイドライン(図表2)をもとに、グローバルスタンダードとして推奨されている治療薬について解説。現状では「酸素投与が必要」以上の患者に対するレムデシビルとデキサメタゾンの単独もしくは併用療法しか推奨されておらず、「入院不要の患者や入院しても酸素投与不要の患者に対しては推奨できる治療薬はない」とした。

レムデシビルについては、プラセボとの比較で回復までの時間を5日短縮させたという肯定的な報告があるものの、「院内死亡率を低下させない」としたWHOの試験をはじめ有効性について否定的な論文も数多くあるとし、評価が分かれていることに注意を促した。

「根拠のない薬をヒトに投与」

一方、国立感染症研究所ウイルス第三部室長の松山氏は、コロナウイルス研究者の立場から、COVID-19パンデミックで浮き彫りになった日本の問題点として科学技術の評価体制の脆弱さを指摘。評価体制が弱いことにより、COVID-19に対する効果が検証されないまま抗インフルエンザウイルス薬ファビピラビル(商品名:アビガン)が多くの患者に使用される事態が生じていると強い問題意識を示した。

松山氏は、自身の研究などをもとに「ファビピラビルはインフルエンザに対しては高い抗ウイルス効果を示すが、新型コロナに対してはウイルスの増殖を促進させるような性質もある」とも述べ、「コロナウイルスの複製機構はインフルエンザウイルスの複製機構と全く違う。インフルエンザに効くからコロナにも効くとは考えないほうがいい」と強調。「(効果の)検証なしに根拠のない薬をヒトに投与するという乱暴なことがこの1年で行われた」として、臨床現場でのこれまでの対応に批判的な見方を示した。

松山氏は「多くの場合、(日本の)科学者は慎重な意見しか言わない。『どうすればいいか』と問われたときに『慎重に考えたほうがいいです』ぐらいのことしか言わないというのがまた問題」と日本の科学者の姿勢も問題視し、「我々の弱点を見つけて改善していくこと」を今後の重要な課題として挙げた。

変異株の一部でワクチンの効果減弱

シンポではCOVID-19ワクチンも話題となった。

阪大微生物病研究所教授の渡辺登喜子氏は「COVID-19ワクチンの有効性と安全性には未だ不明な点が多い」としながら、ワクチンによって誘導される免疫の持続期間について「少なくとも半年は持続する」、アストラゼネカのアデノウイルスベクターワクチンで血栓ができる危険性が指摘されていることについて「直接的な関連はなさそうだ」とコメントした。

渡辺氏は、変異株に対するワクチンの有効性にも触れ、英国株には「効果がある」とする一方で、南アフリカ株については「効果が減弱する」、ブラジル株や国内の変異株についても「効果減弱の可能性がある」との見解を示した(図表3)。

コロナが「可算的人間観」強める

シンポには医療人類学を専門とする慶大の磯野真穂氏も参加し、COVID-19の感染拡大は、命が守られているかどうかを「数えること(感染者数、重症者数、死亡者数など)」で評価する「可算的人間観」を強固にしていくと指摘。医療者への要望として「ポジティブなメッセージももう少し発信してほしい」と訴えた。

 

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