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角膜ヘルペス[私の治療]

No.5056 (2021年03月20日発行) P.38

重安千花 (杏林大学医学部眼科学教室)

登録日: 2021-03-21

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  • 角膜ヘルペスは,単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)による角膜炎である。初感染での発症は少なく,多くは三叉神経節に潜伏感染したHSV(主にHSV-1)が下行性に再活性化して,角膜に感染を生じる1)。角膜の発症部位により,上皮型,実質型,内皮型に分類され,それぞれ病態および治療が異なる。また,感染後の二次的な創傷治癒の異常として,栄養障害性角膜潰瘍などを引き起こすメタヘルペスの状態が各角膜層でみられる。

    ▶診断のポイント2)

    上皮型はHSVが角膜上皮で増殖した状態であるのに対し,実質型はHSVに対する角膜実質での免疫反応が主体である。

    【上皮型】

    角膜上皮で増殖したHSVによる病態であり,特徴的な枝分かれ状の形態が細隙灯顕微鏡でみられる。典型例では,樹枝状角膜炎(先端部が拡大するterminal bulbがみられる)から,地図状角膜炎(樹枝状病変が拡大したもの)へ進展する。またメタヘルペスの状態として,遷延性角膜上皮欠損を生じる。確定診断には,病巣部からHSVの分離培養・同定が必要であるが,臨床的には確実診断として,terminal bulbを持つ樹枝状または地図状角膜炎の所見をもってされることが多い。また,確実診断として蛍光抗体法によるウイルス抗原の証明,補助診断として角膜知覚の低下,上皮型角膜ヘルペスの既往,polymerase chain reaction(PCR)法によるウイルスDNAの証明が用いられている。アメーバ角膜炎や薬剤性角膜炎などの偽樹枝状角膜炎との鑑別には,イムノクロマト法による迅速診断キット(チェックメイト®ヘルペス アイ)が有用であるが,特異度が100%であるものの感度が55%程度であることには留意が必要である。

    【実質型】

    角膜実質に感染したHSVに対するホストの免疫・炎症反応による病態である。円板状角膜炎(典型例では,角膜実質中央の病巣部の淡い角膜混濁と実質浮腫がみられ,角膜後面沈着物を伴う。遅延型過敏反応により病巣部との境界に免疫輪がみられる),壊死性角膜炎(円板状角膜炎を繰り返すことにより強い炎症が生じ,角膜実質に血管浸潤,瘢痕形成,脂肪変性などを伴う)がみられる。メタヘルペスの状態として栄養障害性潰瘍を生じる。確定診断としては,病巣部からのウイルスの分離培養・同定が必要であるが,臨床的には上皮型角膜ヘルペスの確実な既往,再発性,角膜知覚低下,PCR法によるウイルスDNAの証明,ウイルスに対する血清抗体価の上昇などをふまえて診断する。

    【内皮型】

    病態はいまだ不明であるが,角膜内皮細胞に病変の主座が存在し,角膜内皮機能不全による症状を引き起こす。臨床所見は水痘帯状疱疹ウイルス,サイトメガロウイルスなどによる角膜内皮炎と類似する。典型例では,角膜周辺部に扇型の角膜上皮・実質の浮腫がみられることが多い。角膜後面沈着物が病巣部に沿ってみられても,前房内に強い炎症がみられないこともある。また,角膜輪部の炎症に伴い,眼圧の上昇を伴うことが多い。確定診断には,前房からのウイルスの分離培養・同定が必要であるが,前房水PCRによるウイルスDNAの証明,また,臨床所見により診断することが多い。

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