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【識者の眼】「豪雪災害とオンライン診療」紅谷浩之

No.5050 (2021年02月06日発行) P.74

紅谷浩之 (医療法人社団オレンジ理事長)

登録日: 2021-01-20

最終更新日: 2021-01-20

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先日、福井県は豪雪に見舞われ、積雪は福井市内で100cmを超えた。3年前にも37年ぶりの豪雪に見舞われ、積雪は最大で147cmを記録した。今回の雪はこの時を思い出さざるを得なかった。振り返れば、除雪が思うように進まず、あちこちで車の立ち往生が相次いだ。訪問診療は2週間にわたって困難となり、約200件の訪問診療を中止せざるを得なかった。通院困難な患者に医療を届けることが在宅医療の役割であるにも関わらず、それが出来なかったことは非常に苦痛だった。

重症心不全でCVカテーテルからの薬剤投与により在宅療養中だった女児への診療も同様であった。県内でも豪雪地帯に居住し、近隣に対応可能な医療機関がないため、片道30kmほど離れた当院から週1回の訪問診療を継続していたが、訪問できる状況になかった。そこで、なんとか訪問可能であった近くの訪問看護師や訪問薬剤師と連携してオンライン診療を行った。看護師が患者宅にいるタイミングで、カテーテルの状況などを映像で確認するとともに、必要な処置を指示した。診療は非常にスムーズで、体調不良なども起こらず、豪雪の時期を乗り切ることができた。このケースでは普段からLINEやメールを使って、家族や多職種で情報共有を行っていた。時には写真や動画を多用しながら、患者の体調を共有するのが習慣化されていたことが功を奏した。

このケースのように、普段からオンラインの要素を診療に取り入れておくことが、実際に豪雪を含めた各種災害が起きた時の医療インフラを守ることにつながる可能性があるのではないか。オンライン診療と定期の訪問診療の組み合わせによって診療を効率化できる要素もあるかも知れない。また、地域の多職種、特に看護師や薬剤師との連携で診療の質をより高めることもできるのではないか。新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、止むを得ずオンライン診療の諸条件が時限的に緩和されているが、今だけの状況で終わらせず、いろんな意味でオンライン診療を新たなツールとして使いこなす時代が来ているように思う。

紅谷浩之(医療法人社団オレンジ理事長)[災害時の医療インフラ]

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