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新型コロナウイルス感染症(COVID- 19)パンデミック時の食道癌手術で気をつけることは?

No.5046 (2021年01月09日発行) P.50

藤原俊 (岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 消化器外科学教授)

河野浩二  (福島県立医科大学消化管外科学講座主任教授)

登録日: 2021-01-06

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  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に蔓延していますが,パンデミック時に侵襲が大きい食道癌手術を実施する際に注意すべき点をご教示下さい。切除不能および再発食道癌に免疫療法を行う際の注意点も併せてお願いします。福島県立医科大学・河野浩二先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    藤原俊義 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 消化器外科学教授


    【回答】

    【ICUの機能低下や,人工呼吸器不足,医療チームのマンパワーなどを慎重に判断して,食道癌の手術療法を実施する必要がある】

    一般に食道癌は他の固形がんに比べ悪性度が高く,早急に積極的な治療が必要であることが多いです。食道癌は外科手術の中でも大侵襲手術を必要とし,ICUや人工呼吸器での管理を必要とする代表的な疾患です。一方,COVID-19は,ICUの機能低下や,人工呼吸器不足,医療チームのマンパワー不足をもたらします。このことから,食道癌手術は,最も影響を受けやすい手術と言えます。そこで,我々は,COVID-19蔓延下で,食道癌手術にいかに対応すべきか,指針を立ててみました1)。本稿では,その要点を述べさせて頂きます。

    (1)医療機関のPhase分類とStageⅡ,Ⅲ進行食道癌への対処法

    まずは,各医療機関の状態を下記の3つのPhaseに分類します。
    ・PhaseⅠ:COVID-19患者がほとんどいない。病院の治療資源が枯渇していない。ICUでの人工呼吸器にまだ余裕がある。病院内のCO VID-19患者の増加傾向が急速ではない状態
    ・PhaseⅡ:ICUでの人工呼吸器が限られている。病院内のCOVID-19患者が急速に増加している状態
    ・PhaseⅢ:病院の治療資源がすべてCOVID- 19患者のために使用されている状態。ICUで使用できる人工呼吸器がない状態

    最も対象が多く,標準的と言えるStageⅡ,Ⅲの進行食道癌の治療についての方針を考えてみます。まず,PhaseⅠの医療機関で,T1b以上の患者は,基本的に,通常のタイミングで手術療法を考慮すべきです。さらに,術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy:NAC)が適応となる患者であれば,可能な限りNACを施行します。また,既にNACが終了している患者では,さらに数サイクルのNACの追加にて,手術日程の変更も考慮されると思います。

    PhaseⅡおよびPhaseⅢの医療機関では,気管閉塞例などの緊急対応例を除き,基本的に患者をPhaseⅠの施設へ転院させることを考慮します。また,既にNACが実施され,転院等が困難な場合には,化学放射線療法(chemoradiotherapy:definitive CRT)に変更することも考慮します。

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