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新型コロナ・パンデミックの贈り物[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.49

長谷川好規 (国立病院機構名古屋医療センター院長(第60回日本呼吸器学会学術講演会会長))

登録日: 2021-01-02

最終更新日: 2020-12-22

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2020年は新型コロナウイルス(COVID- 19)に始まり、COVID-19一色で過ぎた。新型インフルエンザウイルスのパンデミックは10年から40年の周期で発生すると言われてきたが、2009年の新型インフルエンザから10年を経て、思わぬ伏兵であるCOVID-19のパンデミックに人類は遭遇した。新型インフルエンザに対して様々な施策、準備、訓練が行われてきたにもかかわらず、COVID- 19のパンデミックにかくも社会が脆かったのはどこに原因があるのだろうか。

インフルエンザについては、①治療薬が存在すること、②ワクチン開発の歴史と実績がある、など経験的な社会的安心感の違いがあるように思われる。COVID-19においてもこの2点が期待される所以であろう。社会は、しばらくCOVID-19のリスクを一定の範囲で許容することになる。一方で、我々医療者は、院内感染症としてのCOVID-19の脅威と絶えず戦い続けることになる。病院、医療介護施設が最も大きなクラスターのリスクを背負うことから、改めて感染対策の基本を診療に定着させてゆくことが求められる。

近年、SARS、MERS、COVID-19が短期間に出現してきたが、新規パンデミックは加速度的に出現する可能性があり、新型インフルエンザ、新・新型コロナなど、たとえCOVID-19が終息しても、現在抱える問題点は今後も避けて通れない。

感染症診療体制に加え、通常診療における診療構造の弱さが病院経営にも現れた。昨年から地域医療構想の議論が本格化したが、現在の医療状況は、やがてくる時代を先取りして垣間見させてくれているようにも感じる。問題点・課題の解決はまさに変革のチャンスであろう。人類はパンデミックを幾度も乗り越えてきた。2021年が21世紀らしい成熟社会型パンデミック克服元年となることを期待したい

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