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ネンネンコロリからピンピンコロリの高齢社会をめざす[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.30

羽生春夫 (東京医科大学高齢総合医学分野特任教授(第62回日本老年医学会学術集会会長) )

登録日: 2020-12-30

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2025年には後期高齢者がピークとなり、国民の4人に1人が75歳以上となる。健康長寿社会の実現へ向けた取り組みは既に多方面から行われているが、わが国では平均寿命がわずかに延びつつあるものの自立可能な健康寿命はほとんど延長していない。すなわち、要介護となってから死に至るまでの人生ラスト10年問題が喫緊の課題となっている。

健康寿命を阻害する要因として、第一に認知症、第二に脳卒中、第三位に老衰・衰弱(フレイル)が挙げられる。脳卒中は生活習慣病の予防や管理などによって対応可能となるが、老化の延長線上にある認知症やフレイル、ADLの低下といった生活機能障害は最後に残された大きな課題であろう。臓器別に細分化された医学の進歩だけでは、この問題を解決することは困難である。健康寿命を延長し、ネンネンコロリからピンピンコロリを可能にするためには、“高齢者の疾患を診る医療”から“疾患を持つ高齢者を診る、併せて生活機能も診る医療”へとパラダイムシフトが求められているのである。

最近の認知症研究の進歩は目覚ましく、アルツハイマー病に対する疾患修飾薬も近い将来登場するであろうと期待されている。また、WHOからは認知症のリスクを低減する12項目が発表され、認知症の一部はもはや予防可能な疾患として認識されつつある。さらに、75歳以上の後期高齢者を対象としたフレイル健診も開始され、一部の自治体では受診者に対する介入も試みられている。生活習慣病の予防や治療とともに、運動や趣味を生かした活動的な生活を送ることによって、認知症やフレイルの発症を予防できるという報告も集積されつつある。したがって、老年医学の知識や、スキルを持つ専門医を育成することが、ピンピンコロリをめざした健康長寿社会の実現には不可欠なのである。

老化に伴う認知機能や身体機能の低下は普遍的かつ進行性であり、内在的な要素を含むため根本的な解決は無理だとしても、老年医学的な対応によって人生100年時代を明るくすることはできるだろう。

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