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特発性周辺部角膜潰瘍[私の治療]

No.5043 (2020年12月19日発行) P.39

臼井智彦 (国際医療福祉大学医学部眼科学主任教授)

登録日: 2020-12-21

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  • 特発性周辺部角膜潰瘍は,全身疾患を伴わずに角膜周辺部に潰瘍をきたす疾患であり,一般的にはモーレン潰瘍と呼ばれる。若年~中高年の片眼または両眼の角膜周辺部に急速な潰瘍を生じ,穿孔をきたすことも多い。いまだ原因不明であるが,角膜に存在する自己抗原に対する自己免疫疾患と考えられている。患者は充血と強い眼痛を訴える。

    ▶診断のポイント

    灰白色の浸潤を伴う輪部に沿って円弧状に生じる角膜潰瘍で,潰瘍辺縁は急峻な掘れ込み(overhanging edge,undermined)を呈する。透明帯はない。潰瘍周囲の毛様充血を認めるが,強膜炎は伴わないか,あってもその程度は軽度とされる。リウマチや多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)による周辺部潰瘍との鑑別には,血液検査や強膜炎の有無が参考となる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療の基本は薬物療法による消炎である。軽症例の初期治療では,ステロイド点眼薬の頻回点眼による消炎を行う。感染予防に抗菌薬点眼も用いる。免疫抑制薬の点眼(0.05%シクロスポリン自家調剤点眼液)を併用することも多い。炎症が強いケースでは,潰瘍に沿った部位の結膜切除(Brown手術)を行う。

    これらの局所治療に反応がよくない活動性の高いケース,来院時に既に潰瘍がかなり進行している例,また再発例ではステロイドやネオーラル®(シクロスポリン)の内服も併用する。ステロイドはベタメタゾン2mg/日やプレドニゾロン10~20mg/日で開始し,活動性に応じて漸減する。シクロスポリンは3mg/kg/日から開始し,活動性やC2(内服2時間後の血中濃度),トラフ値をみながら1~2mg/kg/日へと漸減する。トラフ値は50~150ng/mLを目安とする。

    薬物療法に抵抗性の場合や穿孔例では,外科的治療を行う。病的結膜の侵入を防ぐバリアを構築するための角膜上皮形成術や,潰瘍による菲薄化や穿孔部位の補強ならびに眼球形態維持のために,表層角膜移植術が選択される。両術式の併用を行うこともある。穿孔部位が小さい例では,治療用ソフトコンタクトレンズ装用や羊膜移植を行うこともある。外科的治療を行った場合においても再発予防は重要であり,術後も長期間にわたり局所点眼治療に加え,シクロスポリン内服を続行する。

    【注意】

    シクロスポリンの内服導入に関しては,腎毒性や肝機能障害の出現に注意する必要があり,全身状態を定期的にモニターする。またHBVやHCVのキャリア,陳旧性肺結核の患者では,ステロイドや免疫抑制薬投与による再活性化の可能性があるため,血清学的検査を行ってから慎重に投与するのが望ましい。

    また本疾患では,長期にわたりステロイドや免疫抑制薬の投与が必要となるため,眼圧上昇や感染に十分注意しながら経過観察を行う。

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