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【識者の眼】「訪問看護ステーションの人員基準」齋藤訓子

No.5044 (2020年12月26日発行) P.61

齋藤訓子 (公益社団法人日本看護協会副会長)

登録日: 2020-12-09

最終更新日: 2020-12-09

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染がまた拡大し、地域によっては一般診療の制限や手術の延期があり、既に医療提供体制への影響が出ているように思います。日々、奮闘している医療従事者がバーンアウトに陥らないよう何ができるかさらに模索が続きます。

さて、前回(No.5035)は医療機関から訪問看護ステーションへ出向する仕組みをご紹介いたしました。この仕組みで大事なことは、出向先の訪問看護ステーションの教育・研修指導体制です。訪問看護の経験がない方を1カ月程度で教育し、その後、ステーションの人員として働きますので、教育体制がなければこの仕組みは成り立ちません。

訪問看護ステーションは常勤換算2.5人の職員、うち管理者が常勤専従であれば介護保険のサービス事業として指定されます。2018年時点で約1万カ所のステーションのうち、5人未満の訪問看護ステーションが約60%で、7人以上は17.8%という割合になっています(2019年7月17日中医協総会資料)。また経営に関する実態調査結果を見ても規模の経済が働いていることが判っていますので日本看護協会(以下本会)は、訪問看護ステーションを大型化する方向で充実を図ろうと活動してきました。例えば2012年度の介護報酬改定では看護小規模多機能型居宅介護サービス、2014年度の診療報酬改定では機能強化型訪問看護管理療養費を提案し、後者ではステーションの教育機能が望ましい要件となりました。東京都等の取り組みでは、教育体制があり、長期に事業継続しているところを「教育ステーション」と定めて、新規参入者への指導体制を作っているところもあります。数が多くなってきた訪問看護ステーションですが、規模が小さいと夜間の電話当番が頻回で職員への過重な負担につながりますし、やはり処遇が上がっていかない状況です。従ってステーションの人員増は必須だろうと考えますが、この期に及んでも基準を下げろというご意見があります。過疎になりつつある地域では人員確保ができずに新規参入が難しいことは重々承知ですけれども、基準を下げればますます運営が難しくなります。在宅療養を支えるためにはどういったケアの提供体制が組めるのか、地域にある資源で何ができるのかが問われるのではないかと思っています。

齋藤訓子(公益社団法人日本看護協会副会長)[在宅医療]

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