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【識者の眼】「若い医師の考える終末期」武久洋三

No.5042 (2020年12月12日発行) P.65

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2020-12-03

最終更新日: 2020-12-03

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終末期をどう考えてどういうスタンスで対応すればよいのでしょうか? 高齢化がますます進む日本で「終末期」が悩ましい問題となっています。

急性期病院で90歳過ぎの父親が死亡したのは、病院の栄養補給が不十分だったからだと家族が訴えた話が医療関係者専用サイトに掲載され、それに対して様々なコメントが多数寄せられています。コメントは若い医師が多く、「90歳以上も生きてきたら十分じゃないか」「そんな人をこれ以上治療するなんて無意味だ」というような内容が多くみられます。入院中もきちんと水分や栄養を投与するべきであるという意見は少数派です。私自身、今は後期高齢者ですが、30歳の時は「50歳になったら人生終わりだな」と思っていましたし、50歳の時には70歳以上の人の存在を明らかに軽視して「そんなに長生きしてどうするの?」的な考えだったことを思い出しました。そうなんですよね、年齢や立場により、生や老に対する思いは大きく変化するものなんですよね。

現在、ネット上で、高齢者に無駄に人生を長引かせる治療をすることは無意味であると書き込んでいる人も、60歳、70歳ともなれば、自分自身でも驚くほど変わったなと思うでしょう。80歳でも90歳でも、できるなら、いつまでも元気で楽しい余生を送って、死ぬ時は短期間で苦しみの少ない死に方が「できればなぁ」と願うようになるのでしょうね。人間の一生は、その人だけのものです。元気で長生きして、病気になっても早く治療してもらって元気になって、さらに楽しい日常生活を送れたらいいなと思う。これが普通の高齢者というものでしょう。

高齢者の命を軽視する若い医師を非難しているのではありません。若いということは、そういうものなのです。自分達の周りの中では高齢者の存在は小さいものに見えていて、自分を中心に世の中は回っているものなんです。それが普通の若者なんだということを理解しなければなりません。

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[高齢者の終末期医療]

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