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肛門直腸腫瘍[私の治療]

No.5040 (2020年11月28日発行) P.30

小西文雄 (練馬光が丘病院外科常勤顧問/消化器センターセンター長)

登録日: 2020-12-01

最終更新日: 2020-11-25

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  • 直腸腫瘍は,良性腫瘍である腺腫と悪性腫瘍であるがんからなり,直腸癌が主な治療対象となる。わが国では,結腸癌と直腸癌を合わせた大腸癌の死亡率は,悪性腫瘍の中で,男性では3番目,女性では1番目に多い。肛門腫瘍の主体は肛門癌で,比較的稀ながんである。肛門癌には類基底細胞癌,肛門腺や痔瘻由来のがん,扁平上皮由来の扁平上皮癌がある。また,時に粘膜下腫瘍としての内視鏡所見を有する直腸カルチノイド(neuroendocrine cell tumor)を認めることもある。直腸カルチノイドは悪性腫瘍として分類されており,悪性度の判定基準がある。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    直腸癌においては,便通異常(頻便),血便,肛門部の疼痛などが主な症状である。診断には直腸肛門指診が必須であり,基本的な診察方法である。

    【直腸指診】

    下部直腸癌では,直腸指診により,腫瘍の位置,大きさ,可動性,狭窄の有無などを判定する。肛門癌は,肛門部の視診や直腸肛門指診によって診断され,生検によって診断が確定する。

    【内視鏡検査】

    大腸内視鏡検査が診断および生検目的で使用される。直腸癌の壁深達度の判定は,治療方法の選択において重要である。内視鏡検査〔色素内視鏡検査やnarrow band imaging(NBI)等も含む〕,超音波内視鏡検査等によってなされる。

    【CT,MRI】

    直腸癌の場合は,局所浸潤の程度(T stage),リンパ節転移の有無と範囲(N stage),また,血行性転移の有無(M stage)などの評価結果が治療方針を決定する際に重要である。この目的で,CTやMRIが施行される。特にMRIによって局所浸潤の程度やリンパ節転移の有無などについての判定が行われる。大腸内視鏡検査,CT, MRI等の普及により,注腸造影の必要性は少なくなっており,診断上必須の検査ではない。

    【病理組織診断】

    生検は,診断を確定するために必須である。直腸癌の場合は,高分化腺癌,中分化腺癌,低分化腺癌,粘液癌,稀に印環細胞癌などがある。肛門癌の生検所見では,類基底細胞癌,腺癌,扁平上皮癌などがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    直腸癌の治療の基本は病変の切除である。

    【早期癌】

    早期癌の場合には,切除前の深達度診断によって局所的切除(主として内視鏡切除)あるいは手術的直腸切除を選択するかを決定する。粘膜下層深層に浸潤している場合には,リンパ節転移の危険性があるので,通常手術的なリンパ節郭清を伴う直腸切除が考慮される。内視鏡所見によって,粘膜病変であるか粘膜下層浸潤があるか否かを判定し,粘膜下浅層までの浸潤という判定であれば,内視鏡的摘除を選択する。肛門管近傍の早期癌であった場合には,経肛門的切除が選択されることもある。

    【進行癌】

    T2,T3,T4の直腸癌に対しては,リンパ節郭清を伴った直腸切除術が施行される。T3,T4の場合には,欧米では,術前に放射線化学療法が施行されることが多い。この治療法は,術後の局所再発を低下させる効果があるが,生存率には寄与しないとする臨床研究の結果が多い。また,T3,T4の下部直腸癌の場合には,側方向リンパ節(骨盤壁に接した内腸骨動脈流域のリンパ節)郭清を施行して,長期成績の向上をめざす方針もある。

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