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【識者の眼】「『デジタル庁』創設で『使いやすい電子処方箋』が実用化されることを望む」杉浦弘明

No.5041 (2020年12月05日発行) P.58

杉浦弘明 (しまね医療情報ネットワーク協会理事・事務局長)

登録日: 2020-11-19

最終更新日: 2020-11-19

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今、島根県の医療ネットワークでは、日本医師会認証局が運営する公開鍵基盤(Healthcare Public Key Infrastructure:HPKI)を利用して、下記の3つの文書についてペーパーレス運用をしています。

①診療情報提供書(送付先:医療機関)

②主治医意見書(送付先:市役所の介護保険担当部署)

③訪問介護指示書(送付先:訪問看護ステーション)

これらの文書は、県内の医療機関、訪問看護・介護事業所等を相互につなぐ医療情報ネットワーク「まめネット」のサーバー上で送受信が管理されています。メリットが多いため利用実績は上々です。

もし、法律上の規制を考慮しなくてよければ、上記のシステムを利用して、医師が電子カルテで処方箋を発行し、HPKIで署名後、患者さんの希望する薬局を選択しサーバーへ送付。薬局側でダウンロードしたものを真の処方箋として受け取り可能です。あわせて、電子カルテの内容も参照可能であれば患者さんに多くのメリットがあります。しかし、法律上そのようなことはできません。さらに、下線部の仕組みを実際に運用するには、薬局側のシステム導入の有無によって患者さんが自由に調剤薬局を選べるフリーアクセスの観点が阻害されないことと、患者さんに処方箋が発行されていることを証明する「物証」が必要です(紙の引換券、ICカード、QRコード等)。「物証」については、医療機関で患者さんに「物証」を手渡して調剤薬局で「物証」を提示し薬を受け取る形にした場合、現状行われている方法、即ち薬局はfaxで処方内容をあらかじめ伝えられていて、患者さん等が真の処方箋を薬局に持って行って薬をもらう方法とあまり変わらなくなってしまいます。またICカードの場合、本人以外の家族等の第三者による提示の可否が問われます。

新政権となり「デジタル庁」創設にあわせて、思い切った方式で「使いやすい電子処方箋」が実現することを切に願います。

杉浦弘明(しまね医療情報ネットワーク協会理事・事務局長)[ICT

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