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【識者の眼】「がん検診を巡る、ある一面」垣添忠生

No.5038 (2020年11月14日発行) P.54

垣添忠生 (日本対がん協会会長)

登録日: 2020-10-26

最終更新日: 2020-10-26

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わが国のがん検診は、胃がん、子宮頸がん、乳がん、肺がん、大腸がんの五つのがんが対象で、国は受診率50%を目標としているが、なかなか達成できない。

加えて、コロナ禍でがん検診受診率が通年の30〜40%落ち込み、少し遅れてがん死の増加に繋がらないか危惧される。これは世界的な傾向でもある。

私は日本対がん協会会長として、検診受診率を上げることに腐心してきた。最近、がん検診にこんな一面があることを知った。迂闊だったが、自戒の意味を込めて記したい。

日本対がん協会では、2006年から「がん相談ホットライン」という電話によるがん相談事業を展開している。現在は祝日、年末年始を除く、午前10時〜午後1時、午後3時〜午後6時まで受け付けている(新型コロナウイルスの影響で日中の2時間を短縮)。予約は不要で、看護師や社会福祉士に匿名で相談できる。もちろん無料。年間に1万1000件ほどの相談がある。

相談者の中には、がんが検診で見つかった人もいれば、検診を受けずに進行がんで発見された人もいる。双方ともお酒やタバコ、食事、不規則な生活が悪かったのかと、自分を責める人が多い。

ただ、検診で見つかった人は、相談員が情理を尽くして説明し、がんになった原因は特定できないことと併せて、「もしがん検診に行っていなければ、もっと進んでいたかもしれない。自分を褒めてあげてください」などと伝えると、いくらか前向きになり、「見つかったのは良かったことだ」と肯定的な考えに変化していくことが多い。

他方、検診を受けなかった人は、がんのショックに加えて、「検診を受けていたらもっと早期発見できたかもしれない」などと悔やむことが多い。さらに、家族も「なぜ身近にいながら検診を勧めなかったのか」と自分を責める。しかも、治療が始まり、副作用に悩まされたり病状が進んだ時など折に触れて「検診に行っていれば…」という思いが込み上げてきて、ループのように繰り返し自分を責めてしまいがちだという。こうした患者の心の内にも、医療者は想いを馳せる必要がある。

がん検診を受診していたか、受診していなかったかで、心の持ちようが大きく変ってしまう。検診の目的はがんのできる限り早い発見だが、患者の命だけでなく、心も救う機会であることを肝に銘じたい。

垣添忠生(日本対がん協会会長)[検診の意義]

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