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■NEWS 医師の需給、年960時間の時間外労働で29年頃均衡―厚労省が新推計

No.5029 (2020年09月12日発行) P.69

登録日: 2020-09-03

最終更新日: 2020-09-03

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厚生労働省は831日に開かれた「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」に、新たな医師需給推計の結果を示した。今回、供給推計には海外医学部卒医師の将来的な伸びを、需要推計には時間外労働の上限規制導入の影響をそれぞれ反映させる見直しを実施。需要に関しては、時間外労働の上限設定が異なる3つのケースで推計した。それによると、年960時間を上限としたケース2A水準)では、2029年頃に約36万人で需給が均衡。最も医師の需要が高くなる年720時間のケース1でも、32年頃に約36.6万人で均衡するとしている。

22年度の医学部臨時定員、2021年度と同様の方法で設定

この日の分科会は、22年度以降の医師養成数や地域枠の定義などについて議論した。22年度以降の医師養成数については、当初、医師需給推計の結果を踏まえて204月を目途に示す予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で十分な審議を行うことができなかった。このため厚労省は22年度の医学部臨時定員に関しては暫定的に、2021年度と同様、トータルとして19年度の医学部定員を超えない範囲で設定。23年度以降については21年春までを目途に検討することを提案し、了承された。

一方、マクロの需給推計で医師は将来過剰になることがわかっており、今後の議論は医学部定員の削減に舵を切っていくことになる。ただ、医師の地域偏在があり、依然として医師の確保が課題の地域もある。地域枠の医師の地域定着率がそうでない医師よりも高く、医学部全体の定員数が削減される流れにあっても、偏在是正効果が期待できる地域枠は維持されるべきとの考えから、厚労省は今回、地域枠を臨時定員枠内ではなく、恒久定員枠内に設定することを22年度から推進することを併せて提案。基本的な方向性に反対する委員はいなかったが、全国一律の対応を求めているような誤解を与えかねないとの指摘があったことから、各大学・都道府県で検討した上で必要に応じて実施するとの表現に改めることになった。

■地域枠・地元出身者枠の定義を明確化、22年度から運用

これまで曖昧だった地域枠、地元出身者枠の定義を明確化することも決めた。地域枠は、▶対象/地元出身者もしくは全国から選抜、▶選抜方法/別枠方式、▶協議の場/地域医療対策協議会、▶設定する上で協議する事項/地域枠の設定数、従事者要件・キャリア形成プログラムの内容、奨学金の額、地域定着策など、▶同意取得方法/志願時に都道府県と本人と保護者もしくは法定代理人が従事要件・離脱要件に書面同意、▶従事要件/卒直後から当該都道府県内で9年以上従事、都道府県のキャリア形成プログラムに参加、▶奨学金貸与/問わない―と定義。地域枠の定義にはあてはまらないが、対象を地元出身者に限定する枠を「地元出身者枠」とする。地域枠との大きな違いは、選抜方法や従事者要件などを設定しない点。新たな定義の運用は22年度からとする。

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