株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

原発開放隅角緑内障・正常眼圧緑内障[私の治療]

No.5028 (2020年09月05日発行) P.47

稲谷 大 (福井大学医学部眼科学教室教授)

登録日: 2020-09-04

最終更新日: 2020-09-01

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 原発開放隅角緑内障は,緑内障に罹患している40歳以上の日本人のうち,約8割を占める緑内障病型である。原発開放隅角緑内障に含まれる正常眼圧緑内障は,原発開放隅角緑内障の約9割を占めており,日本人の緑内障の病型の中で最も多い。眼圧値が正常範囲に収まっている症例は正常眼圧緑内障に分類され,眼圧値が正常範囲上限を超える症例は原発開放隅角緑内障に分類される。2つの病型を合わせて,原発開放隅角緑内障(広義)と呼ぶことがある。隅角鏡検査で正常開放隅角であるが,視神経障害が進行し,緑内障に特徴的な視野欠損を呈する。年単位の進行で慢性緩徐であることが多く,治療は長期にわたる。

    ▶診断のポイント

    眼圧測定で正常範囲を超える眼圧値を記録することもあるが,正常眼圧緑内障の場合のように,眼圧値が正常値であることも多い。隅角鏡検査では開放隅角であることが必要条件である。最も発見率が高いのが眼底検査である。眼底検査で,視神経乳頭の陥凹拡大,リムノッチング,乳頭出血,神経線維層欠損,傍乳頭網脈絡膜萎縮がみられる。光干渉断層計を用いると,これらの緑内障に特徴的な眼底所見を定量評価して診断することができる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    眼圧値は診察日によって変動するため,3回ぐらい別の日に受診させ,眼圧を測定することで,その患者の眼圧値のベースラインを決定する。視野計には静的視野計と動的視野計があるが,緑内障の視野欠損の進行を経時的に評価するためには,静的視野計を用いるべきである。静的視野計も検査日によって結果に変動があるため,ベースラインの眼圧を測定している診察日を利用して,複数回検査する。

    ベースライン眼圧を測定して,眼圧値が正常範囲を超えている日があれば,原発開放隅角緑内障と診断し,正常範囲内で推移している場合には,正常眼圧緑内障と診断する。

    眼圧下降を行うことで,視神経障害の進行を抑えて,視野欠損の進行を緩やかにする。正常眼圧緑内障でも,より低い眼圧値へ下降させることによって進行が抑制される。眼圧下降治療には,薬物治療,レーザー治療,観血的手術治療がある。これらの治療のうち,薬物治療が優先し,点眼薬を処方する。現在,よく用いられる緑内障の点眼薬を大きく分類すると,プロスタグランジンFP受容体作動薬,EP2受容体作動薬,β遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬,α2受容体作動薬,ROCK阻害薬の6種類である。副交感神経刺激薬やα1遮断薬,イオンチャネル開口薬はあまり使われなくなった。配合点眼薬として,プロスタグランジンFP受容体作動薬とβ遮断薬,β遮断薬と炭酸脱水酵素阻害薬,α2受容体作動薬とβ遮断薬,α2受容体作動薬と炭酸脱水酵素阻害薬の配合薬があり,個々の点眼薬を別々に点眼するよりも患者の負担を減らすことができる。

    まず,プロスタグランジンFP受容体作動薬かEP2受容体作動薬を片眼にだけ点眼し,反対の眼に比べて,どのくらい眼圧に差が出るかをみて,点眼薬の効果判定を行う。これを「片眼トライアル」と呼ぶ。点眼薬の効果を確認してから,両眼に点眼薬を処方する。視野検査は,少なくとも6カ月に1度は行い,進行を判定する。点眼薬を処方していても進行がみられれば,さらに眼圧を下降させるために,別の作用機序の点眼薬を追加する。緑内障の進行を判断する上で,診察時に眼底検査を行う。乳頭出血が観察された場合,緑内障の視野欠損が進行しやすい。光干渉断層計にて6カ月に1度測定し,網膜神経線維層や網膜内層の菲薄化が進行しているかを判定し,さらに点眼を追加して眼圧が下がるかを判断する。

    残り1,048文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top