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白内障手術のガイダンスシステムの現状は?

No.5020 (2020年07月11日発行) P.54

大野尚登  (大野眼科クリニック院長)

登録日: 2020-07-10

最終更新日: 2020-07-07

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白内障手術時に術者の視野に切開創の位置や乱視軸方向などを表示してくれるサージカルガイダンスというシステムが用いられはじめていると聞きます。どのような症例に用いられているか,また具体的にどのような機能のある器材なのか,どの程度普及しているのかなどについて,ご教示下さい。(兵庫県 Y)


【回答】

【まだ広く普及していないが,手術結果の精度向上に役立つ】

近年,白内障手術ではより正確な手術を行うためにサージカルガイダンスシステムが用いられるようになってきています。これは顕微鏡を通して観察される術野にガイダンスをオーバーレイ(overlay)させて,手術をガイドすることで,従来行われてきた術者の経験値に基づくある種の勘を極力排除し,より精度の高いパフォーマンスを得るためのものです。

ガイダンスは主に,①角膜切開を行う際の位置決め,②水晶体を超音波で乳化吸引し,眼内レンズ(intraocular lens:IOL)のサイズに対し適切な大きさの前囊切開を得るための,前囊切開をリードする指標の表示,③乱視矯正のための眼内レンズ(トーリックIOL)の軸を適切に合わせるための指標の表示,④眼内レンズの光学中心が中央に収まっているかを確認するための指標─からなっています。術者はガイダンスに導かれて手術を行うことになります。

また,このガイダンスは眼球の移動や回旋に対する追跡機能(トラッキング機能)を有しています。さらに,手術によって惹起される角膜乱視(surgically induced astigmatism:SIA)について,蓄積された術者のデータから各術者のSIAが最小限になるようにフィードバックする機能も有しています。

近い将来,顕微鏡とサージカルガイダンスを組み合わせた円滑な白内障手術の実施による,手術結果の精度向上が期待されます。現在,わが国では約200台導入されています。まだまだ広く一般に普及しているとは言いがたいのですが,今後その普及が望まれるところです。

【回答者】

大野尚登 大野眼科クリニック院長

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