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【識者の眼】「地域における少数医療系専門職の存在価値」小林利彦

No.5021 (2020年07月18日発行) P.68

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2020-06-25

最終更新日: 2020-06-25

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地域の医療提供体制を維持するためには、一定圏域内での必要病床数(人口および受療率に見合った適正病床数)と医師・看護師等の適正人員数、緊急時を含め総合的かつ専門的に診てくれる診療科の存在と確保が望まれる。しかし、最近の医療現場では、「美味い(質の高い医療)・早い(いつでも診てくれる)・安い(安価な医療費)」という三拍子を揃えることは以前に比べ難しくなってきている。その背景には、医療に関する全般的な業務量が多いこともあるが、法的な規制によって医師の業務(医行為など)を他職種に容易に委譲(タスクシフト・タスクシェア)できない現場事情もある。ここ数年、医師の働き方改革が課題視され、医師事務作業補助者や特定行為研修を受けた看護師への業務委譲が進められてはいるが、それら2職種に限らず、地域ならびに各施設には数多くの医療系専門職がいることを忘れてはいけない。実際、その種の専門職には国家資格者が多く、名称独占だけでなく業務独占を有していることも少なくない。ただし、比較的新しい認定資格等においては、地域レベルでの有資格者が少ない医療系専門職もある。

医療機関にて人数が多い看護職などでは、施設内で一部門としての組織構築を行いやすい反面、部門内での意思決定が優先されがちで、時としてサイロ化した組織となる。一方、施設内の人員数が比較的少ない医療系専門職では、当該職員が施設の中で案外孤立しやすく、各種相談を地域の同業者に求めたくなるのが現実である。地域では一施設にてあらゆる医療系専門職を確保できる医療機関ばかりではないことを考えると、人員数が少ない医療系専門職ほど、地域レベルでのネットワーク構築が重要になる。診療報酬請求等の施設基準を満たすための医療系専門職の確保を時に見かけるが、専門職種には生涯教育が必要であることをふまえ、本人のためにも複数施設間での協働や議論の場の確保が必要になる。人員数が少ない医療系専門職は地域における存在価値(商品価値?)が高いことを再認識し、自らスキルアップを図っていくことが地域医療の質を上げることにつながることを自覚できると良い。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[地域医療]

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