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【識者の眼】「どうする病院─ICTの進化と病院の減少」武久洋三

No.5019 (2020年07月04日発行) P.58

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2020-06-17

最終更新日: 2020-06-17

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コロナ後の医療界は今までの常識が通用しない世界になることは間違いない。まずはICTの進化であろう。今回の経験で、さまざまな会議や学会などが公私を問わずweb会議という方式で行われ、その結果、多くの参加者が「十分これで大丈夫」と思っただろう。今までの人件費や経費増の環境からの脱皮が始まっている。

モバイル機器の機能もどんどん進化し、患者の観察記録も携帯機器に音声入力するだけで電子カルテに自動的に転送できるのが一般的となろう。体温、血圧、SPO2、血糖値等のさまざまなバイタルデータ等についても、専用機器で自動測定したらそのまま電子カルテに自動入力されるようになってくる。世の中は既に「5G」「6G」なのだ。しかし、患者に直接触れる医療処置等にはやはりhand to handが原則であり、業務の効率化によって浮いた時間を、こうした患者対応と医療処置等に費やすことができる。

また在宅療養患者であれば、自宅に居ながら日々のバイタルデータがかかりつけ医療機関に転送され、集積されたデータをAI(人工知能)が分析し、異常を感知したらかかりつけ医療機関の看護師に通知され、直ちに対応できるなどといった最新技術も現実のものとなるだろう。今まで病院は患者の高齢化に伴い、法定人員を超えた職員を配置せざるを得ず、人件費が増大していたが、もはやこれ以上、診療報酬が上がることは難しい。ICT化により、法定の人員配置で効率よく、十分なサービス提供ができるようにするしかない。

最後に、今回の新型コロナウイルスの流行で、感染防止のための様々な対策が改めて医療現場に強く徹底されることとなった。そして患者の受診行動は大きく変化し、外来はオンライン受診が増えてゆくだろう。そして不要不急の入院や手術は減り、ロボット手術、画像診断などにもAIが活用され、今後ますます入院期間の短縮は避けられないだろう。そうなれば病院も病床も減少し、我々医療人にとっては厳しい時代が続く。新型コロナで大判振る舞いして増やした国の支出のため、流行が落ち着いた後に経営状況が良くなる可能性はほとんどない。現場は今から相当の覚悟がいるのだ。公立・公的医療機関も必ずしも運営継続できるわけではない。国がどうにかしてくれるだろうなんて考えは捨てた方が良い。これからはますます病院経営者のマインドが試される。

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[新型コロナウイルス感染症]

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