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鎮守の森 コミュニティ構想 [プラタナス]

No.4702 (2014年06月07日発行) P.3

廣井良典 (千葉大学法経学部総合政策学科教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-31

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  • 少々奇妙なタイトルに響くかもしれないが、それは次のような趣旨によるものである。

    ヨーロッパの国々、たとえばドイツの地方を車や列車で旅すると、小麦畑の間に時々現れる村の中心に必ず教会が立っているのが印象に残る。こうしたことは、あくまでヨーロッパの話であって、日本ではまったく文化的背景が違うと以前の私は思っていた。しかし、ある時から決してそうではないと考えるようになった。

    思えば、祭りや様々な年中行事からもわかるように、日本では地域コミュニティの明らかな中心として神社があった。私は最初に知った時ずいぶん驚いたのだが、全国に存在する神社の数は8万強(寺もほぼ同数)で、中学校の数は約1万、あれほど多いと思われるコンビニの数は約5万なので、これは大変な数である。

    加えて興味深いのは、日本の神社や寺と「自然」との結びつきである。キリスト教の教会は、その「人為」的な建築に特徴があり、尖塔が天を目指すように立っているなど、自然とのつながりは重要な要素ではない。ところが神社の場合は、「鎮守の森」という言葉が象徴するように、森や木々などの存在が不可欠なものとなっている。これは、宮㟢駿監督のアニメーション映画などとも通じるが、自然の中に神々、あるいは物質的なものを超えた何かを見出してきた、日本人の生命観・宇宙観をよく示している。

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