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【識者の眼】「最も平均余命を延ばすスポーツは?」浅香正博

浅香正博 (北海道医療大学学長)

登録日: 2020-05-19

最終更新日: 2020-05-19

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人類・ホモ・サピエンスは20万年前に誕生し、その後の歴史をたどるとほぼ95%は狩猟採取民であったことが明らかになっており、現在の人類の体型はこの長い時代を反映していると考えられる。この時代の生活は狩をしながらの移動生活で、日々の運動量は多く、他の動物から襲われないため、常に動きやすい行動を取っていたと推測できる。したがって運動は人類にとって必須のものであり、ヒトの骨や筋肉はその形態、構造から動くためにできていることがよくわかる。近年、文明の急速な進歩によってマイカーまたは公共交通機関で通勤するようになり、運動する機会が急速に失われつつある。もともと運動するように作られている人体が運動をしないでいると様々な障害が生じるであろうということは容易に推察することができる。

運動は、免疫系を賦活し、筋肉や骨を強化し、精神機能を向上させ、さらにはカロリー消費に効果的であるなど健康にとって重要な役割を果たしている。運動不足は肥満を惹起し、生活習慣病の発症にも大きく関わっている。最新の大規模調査により、座位時間が1日11時間を越える人は4時間以内の人に比して死亡リスクは40%も上昇することが報告されている。WHOは“Sitting is the new smoking”と運動をしない人を喫煙者に例えている。

運動には有酸素運動と無酸素運動がある。有酸素運動は軽〜中度の負荷を継続的にかける運動であり、呼吸で酸素を取り入れそれによって体内の糖質や脂肪を燃焼させエネルギーとする。無酸素運動とは短時間に大きな力を発揮する強度の高い運動で、糖をエネルギー源とするので酸素を必要としない。健康に過ごすためには、有酸素運動と無酸素運動を適当に組み合わせ、持続することが重要であることがわかってきた。実際にどのような運動を行うと長生きできるのかは誰もが知りたいことであるが、デンマークで8577人を対象に25年間にわたって運動をする人としない人の比較を行った研究では、最も平均余命を延ばすスポーツはテニスであり、9.7年も延びている。イギリスからの検討でも同様の結果が出ており、テニスは究極的なインターバルトレーニングで、有酸素運動と無酸素運動が絶妙に組み合わされているためと説明されている。ちなみにジムでのトレーニングではわずか1.5年しか延長しないことが明らかとなっており、筋肉の部分的な鍛錬は直接的に健康とは結びつかないのかもしれない。

わが国では高齢化が進み、運動不足解消のために、運動が勧められているが、高齢者では過剰の運動もまた身体の障害となることに注意が必要である。

浅香正博(北海道医療大学学長)[#運動と健康]

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