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【識者の眼】「ファビピラビル(アビガン®)を使いたいけど、使えないのは何故?─早期投与の評価を」中山哲夫

No.5013 (2020年05月23日発行) P.60

中山哲夫 (日本臨床ウイルス学会幹事会有志代表)

登録日: 2020-05-12

最終更新日: 2020-05-12

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が止まりません。ファビピラビル(アビガン)をはじめとした抗ウイルス薬の臨床試験が行われていますが、臨床現場では簡単に使用できません。4月28日に「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第2版」が日本感染症学会から示されました1)。その中で、抗ウイルス薬の対象と開始のタイミングとして5項目の参考基準が挙げられています。抗ウイルス薬の投与を検討する時期としては以下のように要約されます。

*60歳以上の患者さん、または基礎疾患を有する患者さんでは継続的な酸素投与が必要となった段階

*60歳未満で基礎疾患もない患者さんでは酸素投与下でも呼吸不全が悪化傾向にある段階

5月7日に承認されたレムデシビル(ベクルリー)以外には現在、COVID-19に適応を有する薬剤はなく適応外使用となることから、投与に際しては各医療機関の倫理委員会の承認を得る必要があります。一般的に倫理審査の段階でこの「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第2版」を遵守することが要求され、初期の肺炎患者さんには投与できない現状が続いていることが想定されます。

COVID-19は新しい感染症ですので、治療開始時期に関しては今までの臨床経験から類推することしかできませんが、抗インフルエンザ薬、抗ヘルペス薬といった抗ウイルス薬の投与は、ウイルス増殖を抑制するという薬理作用から、一般的に発症早期でなければ有効性は期待できません。中国政府の下で行われた臨床試験で得られた結果2)や、わが国の症例報告で、早期投与の有効性が期待されています3)。ファビピラビルの早期投与開始の有効性と安全性を適切な手法により評価することを提言します。

遺伝子診断に基づき、高齢者、基礎疾患を有する患者さんだけでなく、遺伝子診断されCOVID-19が強く疑われる臨床症状(発熱、咳嗽、味覚嗅覚異常等)を認め、肺炎像がある患者さん達にも重症化を予防するために、早期投与が必要と考えます。

病原体診断に時間がかかっている現状では、早期投与できる症例が限られるため、遺伝子検査の拡充も望むものです。

【文献】

1)日本感染症学会「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第2 版」(2020年4月28日)

   [http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_200430.pdf]

2)Cai Q, et al:Engineering. 18 March 2020.

3)ミクスonline 2020年4年20日「日本感染症学会・新型コロナWebシンポ」

   [https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=69134]

中山哲夫(日本臨床ウイルス学会幹事会有志代表)[新型コロナウイルス感染症]

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