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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症:もっと子ども家庭福祉に関する施策の充実を」小橋孝介

No.5012 (2020年05月16日発行) P.61

小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科副部長)

登録日: 2020-05-07

最終更新日: 2020-05-07

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緊急事態宣言の1カ月延長が2020年5月4日に決まった。緊急事態宣言によって、学校の休校の継続延長を決めたところも少なくない。しかしながら学校は子ども家庭福祉において重要なセーフティーネットの一つであり、休校によって危機にさらされている子ども達も多い。英国では大規模な都市封鎖(ロックダウン)が行われているが、そのような中でもキーワーカー(医療や治安、生活の維持に必要な職業)の子どもと脆弱な子ども(vulnerable child=日本における要支援児童を含む地域の福祉が関わっている子ども)は学校に登校し続けている。国の方針としての決定である〔(英国学校向けガイダンスのサマリー(小橋翻訳)1)〕。

海外では外出自粛によって子ども虐待やDVが増加すると報告されているが、現在のところ、泣き声通報は増加しているものの子ども虐待の大きな増加は見られていない(千葉県内児童相談所との私信による)。これは、上記のような学校の休校や地域の乳幼児健診や新生児全戸訪問事業の延期、地域の見守りの場であったひろばの閉所など、今まであった子どものSOSに気がつくチャンスが著しく減少していることに関連していると考えられる。

厚生労働省は4月24日「子どもの見守り強化アクションプラン」を発表し、関係各所に事務連絡を発出している。

さらに追い打ちをかけるように、多機関が情報を共有し役割分担を確認、調整する地域の要保護児童対策地域協議会(要対協)の開催が中止・延期されている現状がある。本来は地域の子どもを支援し安心・安全を維持するために多機関が連携する重要なハブとなる会議である。英国では、ソーシャルワークについてガイダンスが出されており、その中で情報通信技術等を用いて地域の多機関が情報共有し連携を維持していくための努力を行うことが明記されている〔英国ソーシャルワークに関わるガイダンスのサマリー(小橋翻訳)2)〕。日本においても、早急に要対協が機能維持できるよう、国が明確に指針を示すべきである。

日本の新型コロナウイルス感染症対策は、感染症対策や経済対策が先行し、子ども家庭福祉の領域は置いていかれている。こういった現状に私達はもっと声を上げていかなければならない。

【文献】

1) [https://drive.google.com/open?id=1JGDCkzfWC7-aEwlhazSuurKLD_T2H5Cp]

2) [https://drive.google.com/open?id=10vkvKYqL1ZhKYd0zzNAoRgbymzalEBGU]

小橋孝介(松戸市立総合医療センター小児科副部長)[新型コロナウイルス感染症子ども虐待]子ども家庭福祉学校保健

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