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【識者の眼】「高齢救急患者が増加する今、救急体制を考えよう」武久洋三

No.5011 (2020年05月09日発行) P.28

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2020-05-07

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この4月から診療報酬が改定されました。今回の改定では特に、重症度、医療・看護必要度(以下、必要度)を厳しくして急性期病院の絞り込みをしようとしています。一方で、救急患者を多く受け入れている病院を救済しようとしています。必要度Ⅰでは救急搬送後の入院の評価を2日から5日間に延長し、必要度Ⅱでも緊急に入院を必要とする状態(5日間)を新たに評価しています。さらに救急患者の受け入れ件数により、1000件/年以上と2000件/年以上の2群を評価しています。特に2000件/年以上の病院を地域の救急医療体制において一定の実績を有する高度急性期病院として評価し、地域医療体制確保加算520点を新設しました。

日本の病院は何とか急性期病院として評価されたいと必死です。しかし実態の伴っていない病院が多すぎるのです。厚労省はそれを何とか実態に沿って分別しようと努力しています。しかし救急は数だけでなく病状で判断すべきです。

2018年中の救急自動車による搬送人員の約60%は高齢者であり、そのうち軽中度の患者は約80%で、直ちに緊急対応すべき重度救急患者は約10%なのです。高齢者の軽中度の救急患者が高度急性期病院に搬送され、その対応に忙殺されることにより、本当の重度救急患者が来た時に受入拒否してしまっては本末転倒です。私は救急患者の受け入れ医療機関は大きく2つに分けるべきだと思います。重症患者は高度急性期病院へ、そして、特に高齢者の軽中度の患者は高齢者の治療に習熟した慢性期治療病棟を含む、地域多機能な病院が引き受けてはいかがでしょうか。まさにそのような救急患者がどんどん増えているのです。さらに現在は高齢者の車の免許返納を促進しています。免許証がなくなった高齢者世帯で急病者が出たら、軽度でも救急車を呼ばなければならなくなります。

これからは、ますます高齢者救急が増え続けます。何もかも高度急性期病院へという救急体制の現状を変えていきませんか。皆で救急問題をよく考え直してみませんか。

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[救急医療][2020年度診療報酬改定]

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