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【識者の眼】「COVID-19の三大死因の一つに血栓症が加わった」坂本二哉

No.5011 (2020年05月09日発行) P.20

坂本二哉 (日本心臓病学会初代理事長)

登録日: 2020-04-30

最終更新日: 2020-04-30

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2020年4月中旬、アメリカのテレビでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の死因の一つとして治療抵抗性の血栓症が問題視され始めていた。アメリカの二大主要新聞の一つであるWashington Post誌(4月22日)には、Clinical-care surgeonのCraig Coopersmithが同僚との共同記載で、彼らの患者の20〜40%で血栓(blood clots)が致命傷であったとの記事が掲載された。その中には妊婦も2名含まれている。

現在、American College of Cardiology発行のJournal of the American College of Cardiology(JACC)に近々掲載予定の論文には、4月15日の時点で、Bikdeli B, Madhaven MVほか44名の共同著者による多施設研究成績がある(COVID-19 and thrombotic or thromboembolic disease:Implications for prevention,antithrombic therapy,and follow-up)。すなわち、静脈系や動脈系ともに、激烈な炎症、血小板活性化、内膜機能不全、血流停滞などによる血栓症が死因に直結する問題であると言う。高齢者に死亡例が多いのは、高血圧、糖尿病、心疾患例が少なくないためと思われるが、そのような例では既に抗血栓療法下にあるものが多く、新型コロナウイルスの感染はその治療を複雑化する。この論文はこの点を詳述している。

最近、日本でもCOVID-19症例が肺炎以外に、家庭などで待機しているうちに急激に悪化したり、突然脳症状で倒れる例が目立ってきている。孤独死例も増えている。入院中に死亡して初めてそれに気付く例もあると報じられるようになった。明らかに肺炎死ではない。専門家はその理由の解明に迷っているようであるが、血栓症あるいは播種性血管内凝固症であれば納得できる。したがって症状の軽重を問わず、血小板、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とプロトロンビン時間(PT)、フィブリン分解産物(FDP)を検討する必要があろう。全症例にできれば(あるいは積極的に)アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)やD-ダイマーの増加をチェックすべきだろう。

抗血栓剤の有効性は低いが、今後の治療法開発が待たれる。またCOVID-19では高血圧、糖尿病、心疾患合併例が死亡増加に関係すると言われているが、それに対し、ACEやARBの積極的投与の有効性が、4月3日、Bavishiらにより示唆されている(COVID-19 infection and renin angiotensin system blockers. JACC April 16, 2020)。それにしても、この物質-生命体の中間体であるウイルスに対し、本質的に有効な薬剤やワクチンの開発が喫緊の課題であることに異論はない。

坂本二哉(日本心臓病学会初代理事長)[新型コロナウイルス感染症]

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