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【識者の眼】「高額医療技術は保険収載の議論より価格設定のあり方が重要」坂巻弘之

No.5009 (2020年04月25日発行) P.63

坂巻弘之 (神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)

登録日: 2020-04-24

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2020年度薬価制度改革が4月からスタートした。基本的な枠組みは、前回18年度の「抜本改革」を踏襲するものといえるが、その中でも、新たに導入された高額再生医療等製品の補正加算を制限するルールは注目される。今後の高額製品上市を前提とした仕組みである。

すでに1患者あたり3349万円余りの細胞治療薬が保険収載され、米国では2億円を超える遺伝子治療薬が3月に薬事承認された。海外では償還に関して、効果のあった患者分のみ企業が支払いを受ける「成功報酬型」や、複数年度に分割して企業が支払いを受ける仕組みなどが導入されている。こうした新たな仕組みをわが国に導入するためには、現行の診療報酬や薬価制度を大きく変更する必要もあり、それらの具体化にはハードルが高い。それもあってか、新医療技術の保険収載範囲を見直す議論も高まっている。

高額医療技術の保険収載のあり方については、とりわけ自己負担での使用が負担能力によるアクセスの格差につながるため、公正の観点から特に慎重に議論しなければならない。医療費の議論において「金のかかる患者」が国にとって負担であるかのような論調にも注意すべきと感ずる。また、イノベーションへの影響も考慮すべきである。

保険償還是非の議論は、医療制度設計の理念に関わる重要な論点が含まれるべきことからも、まずは、価格設定についてさらに精緻な検討を継続することが必要と思われる。再生医療等製品などがなぜ高額なのか。希少疾患の価値評価のあり方も含め、高額な価格設定がどこまで妥当といえるのか。研究開発や設備投資、輸送などに関わるコストなどをどこまで公的な償還価格で補塡すべきなのか。再生医療等製品の多くが海外からの導入品であることが多く、原価算定の詳細が不明であることも多い。再生医療等製品に限らず、高額医療技術については、価格設定のあり方についてより深い議論の余地が多い。

坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)[薬価]

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