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進行大腸癌[私の治療]

No.5007 (2020年04月11日発行) P.39

石井良幸 (北里大学北里研究所病院副院長,北里大学医学部教授)

渡邊昌彦 (北里大学北里研究所病院病院長,北里大学医学部名誉教授)

登録日: 2020-04-08

最終更新日: 2020-04-08

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  • 大腸は消化された食物を便にして排泄する臓器であり,大きく結腸と直腸に分類される。大腸癌は粘膜に発生して大腸壁に進展し,粘膜下層を越えて入り込むものが「進行大腸癌」と定義される。わが国では年間約15万人が罹患し,約5万人が死亡する疾患である。がんの進行度は病期(ステージ)で評価され,進行癌はⅠ~Ⅳ期に分類される。治療はがんの局在(結腸癌・直腸癌)や病期等により異なる。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    進行癌では下血や便通異常(便秘や下痢,便が細い等),腹部のしこり,貧血などの症状で発見される。さらに進行すると腸閉塞(腹部膨満,嘔気・嘔吐)や腹痛をきたす。

    【検査】

    大腸癌の一次検診として便潜血反応検査があり,陽性の場合には大腸癌の疑いとなる。二次検診では内視鏡検査が施行され,病変を認める場合には生検により確定診断される。内視鏡検査が困難な場合は,大腸注腸造影検査や大腸CT検査等で病変の有無が確認される。進行大腸癌と診断された場合には,がんの進行度および全身状態を評価するため血液検査(腫瘍マーカー:CEA,CA19-9,ST-439),全身CT検査,腹部超音波検査,直腸癌では骨盤MRI検査や超音波内視鏡検査,他臓器転移(肝,肺,腹膜,リンパ節等)が疑われる場合には腹部MRI検査やPET-CT検査が行われ,病期が決定される。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    外科的治療,化学療法(抗悪性腫瘍薬),および放射線治療(リニアック,粒子線等)を組み合わせた集学的治療が行われるが,Ⅰ~Ⅲ期の切除可能な病変であれば外科的治療が中心となる。結腸癌では結腸間膜リンパ節郭清を伴う結腸切除が行われ,直腸癌では直腸間膜リンパ節郭清を伴う直腸切除が行われる。Ⅱ・Ⅲ期の進行下部直腸癌では,骨盤側方リンパ節郭清を含む拡大リンパ節郭清,あるいは術前に(化学)放射線治療を行った後,直腸切除を行うこともある。根治的手術(がんの肉眼的遺残がない)後,病理組織学的にリンパ節転移陽性などの,再発のリスクが高いと判断される場合には,術後に補助化学療法を行うことが推奨される。

    他臓器転移を認めるⅣ期については,原発巣・転移巣を含め切除可能であれば原則手術を行う。転移巣は切除不能であるが,原発巣の症状(出血や狭窄など)を認める場合には,原発巣のみ切除することもある。

    根治的手術が不可能な場合には,通常,全身化学療法が行われる。腸閉塞をきたしている場合には,食事摂取を可能にするため,人工肛門造設やステント挿入を行うこともある。

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