SUMMARY
プライマリ・ケアではその継続性ゆえに診断エラーが生じることがある。定期通院患者の緩徐な変化は見落とされやすいことを認識し,意図的に他者の眼(疑似的なものを含む)を通すことが有用である。
KEYWORD
診断遅延(delayed diagnosis)
プライマリ・ケアでは診断遅延が発生しやすく,その理由としては,患者がまず受診する場であること,あらゆる年齢層の様々な患者がやってくること,ある程度リスクを包含した診療となることなどが挙げられている1)。
PROFILE
診療所と病院を行き来する家庭医をめざし奮闘中。2015年愛媛生協病院初期研修開始。2017年医療福祉生協連家庭医療後期研修レジデンシーせとうち専攻研修開始。2020年4月より東京大学大学院医学教育学博士課程進学(執筆時は予定)。
POLICY・座右の銘
You must crawl before you walk.
数年前より徐々にADLが低下しており,在宅生活を支えるため介護サービスの導入や家族へのアドバイスなどを行っていた。頻尿があったが,前立腺肥大によるものと考えていた。あるとき,それまで何回も目にしていたはずの両上肢筋萎縮が気になった。その瞬間,患者は頸椎症性脊髄症であり,歩行困難は痙性歩行,排尿障害は神経因性膀胱であることに思い至った。
軽度の正球性貧血があるが,血液検査では原因が分からず,鉄剤やビタミン剤を用いても改善がなかった。肺炎を発症し近隣病院の総合診療科に紹介する際に,貧血の精査をあわせて依頼したところ,多発性骨髄腫が明らかとなった。