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ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)[私の治療]

No.4997 (2020年02月01日発行) P.45

中丸裕爾 (北海道大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室准教授)

登録日: 2020-02-03

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  • 抗好中球細胞質抗体関連血管炎症候群〔antineutrophil cytoplasmic antibody(ANCA) associated vasculitis:AAV〕は,小血管(細小動静脈,毛細血管)における血管壁破壊を伴う壊死性血管炎である1)。顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA),多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA),好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)の3疾患が含まれる1)。AAVは上気道感染を契機に発症し,高い頻度で耳鼻咽喉科領域の臨床症状を呈する。近年,AAVによる中耳炎をANCA関連血管炎性中耳炎(otitis media with ANCA associated vasculitis:OMAAV)と扱うようになった。OMAAVは診断が難しく,単なる中耳炎として診療している間に,難聴の進行のみならず急速な全身型への移行をきたして致死的な状態になるため,早期の診断確定と治療開始が望まれる2)

    ▶診断のポイント

    鼓膜所見:鼓膜穿孔と耳漏を呈する慢性中耳炎タイプ,中耳腔に滲出液を認める滲出性中耳炎タイプ(伝音難聴のみの場合と感音難聴を伴う場合がある),中耳に病変を認めず感音難聴のみを呈する感音難聴タイプ3)がある。いずれもOMAAVに特異的な病変ではなく,鼓膜所見のみでOMAAVの診断を確定することは困難である。

    合併症状に注目:OMAAVの場合,耳症状単独の症例もあるがAAVの各症状が合併している場合が多い。全身症状として,発熱,全身倦怠感の有無に注意する。また,鼻腔内の痂皮,穿孔の有無,腎障害,肺炎,皮膚症状(紫斑,皮下結節,潰瘍など),脳神経障害(肥厚性硬膜炎,顔面神経麻痺など),末梢神経障害,強膜炎などの眼症状などが比較的頻度が高い。耳鼻咽喉科領域の症状だけでなく,他科領域にも気を配る必要がある。他科領域の症状により診断に結びつくことがある。

    難治の中耳炎,感音難聴:抗菌薬を投与しても改善しない,急速に症状が進行する,対側に症状が出現するなど,通常と違う経過をたどる中耳炎の場合には本疾患を念頭に置きANCAを測定する。

    診断基準:日本耳科学会よりOMAAV診断基準が提唱されている。耳以外の症状を合併している場合には,AAVの各診断基準を使用し確定診断を行う。組織検査は,中耳,側頭骨から確定診断が可能な組織量を採取することは難しく,さらに生検の刺激により病勢が進行し顔面神経麻痺が発症することもあり,他の臓器障害が認められる場合には他部位から採取したほうがよい。特に皮膚からは確定診断が得やすい。

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