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高ナトリウム血症[私の治療]

No.4997 (2020年02月01日発行) P.41

熊谷天哲 (伊丹ガーデンズクリニック)

内田俊也 (帝京平成大学ヒューマンケア学部柔道整復学科教授)

登録日: 2020-01-31

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  • 高ナトリウム(Na)血症は低Na血症に比べて頻度はやや少ない。高Na血症では,血清浸透圧が必ず上昇するため,抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone:ADH)の分泌亢進と口渇中枢の刺激がある。そのため,腎での水の再吸収と口渇による水分摂取があり,通常は重度な高Na血症は発症しない。よって,高Na血症が発症・維持されるためには,口渇の抑制か腎からの自由水再吸収に障害があることになる。前者は高齢者・乳幼児や意識障害患者でみられる。後者はADHの作用の異常である尿崩症や強制的な自由水排泄が起こる浸透圧利尿などでみられる。外来患者では高齢者で基礎疾患は感染症が多く,入院患者では利尿薬の使用が多かったとされる。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    中等度で慢性の高Na血症では軽度のいらいら感,ふさぎこみ程度である。高度で急性の高Na血症では高熱,過換気,易刺激性,痙攣,昏睡が認められる。血清Na濃度が160mEq/L以上では脳実質の縮小による脳内出血・くも膜下出血を認めることがある。

    【鑑別診断】

    鑑別は体液量の評価がポイントとなる。細胞外液量の増加を伴うのは,重曹過剰投与などの医原性や海水溺水である。細胞外液量正常では,痙攣や横紋筋融解などがある。細胞外液量低下を伴う場合,さらに腎性に水分が失われる場合と腎外性に水分が失われる場合にわけられる。腎性喪失ではマンニトール投与時や高血糖時にみられる浸透圧利尿や尿崩症がある。尿崩症ではADHの分泌が低下する中枢性尿崩症と腎集合管でのADH-V2受容体の異常による腎性尿崩症がある。腎性および中枢性尿崩症の鑑別については,まず水制限を行う。正常では,血漿浸透圧の上昇に伴い尿の浸透圧の上昇および尿量の低下が認められるが,中枢性尿崩症および腎性尿崩症では,このような反応がない。次に,血漿浸透圧が295mOsm/kg H2O以上になった時点で外因性のデスモプレシン(1-deamino-8-D-arginine vasopressin:DDAVP)を投与すると,中枢性では反応があるが,腎性ではほとんど反応がなく,鑑別を行うことが可能である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    低Na血症の急速な是正が橋中心脱髄症候群(central pontine myelinolysis:CPM)を起こすように,慢性の高Na血症の急速な是正は細胞外から細胞内への急激な水のシフトが起こり,脳浮腫に至る可能性がある。

    ①症状の有無:症候性であれば,早急な治療が必要である。1~2mEq/L/時の低下をめざし,かつ1日の低下幅として12mEq/L以下を目標とする。

    ②慢性vs. 急性の経過:慢性の場合には脳細胞が高張環境に対応して産生した浸透圧物質による細胞内の高張度のため,急速な是正は脳浮腫に至るリスクが高い。慢性が疑われる場合,症状がなければ1mEq/L/時以下での是正を目標とする。

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