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【識者の眼】「健康危機管理を論文化してパリにバトンを」和田耕冶

No.4996 (2020年01月25日発行) P.61

和田耕冶 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-01-26

最終更新日: 2020-01-21

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筆者は、この5年ほど東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた健康危機管理のあり方について研究を行ってきました。ご興味のある方は以下のサイトをご覧いただければ幸いです。https://plaza.umin.ac.jp/massgathering/publication.html

2012年のロンドンオリンピックや2008年の北京オリンピックでは、様々な健康危機管理の推進がなされました。それぞれ報告書がまとめられ、成果が強調されています。2016年のリオオリンピックは残念ながら報告書などが作成されていないので、どういう成果があったかはわかりません。

さて、今回の東京でのオリンピックの前後で健康危機管理について何がどう変わったのかを、どのように世界に示したらよいでしょうか。

男性の40歳から57歳に対しての風疹の抗体検査と予防接種はオリンピックもあって実現した施策でしょう。しかし、対象者の実施率はあまり高くないようです。大会中は感染症サーベイランスは強化されるでしょう。また、医療機関の多言語化の推進もあるでしょうか。

でも、こうして考えると、オリンピック前後で東京や日本において変わることはあまり多くはないでしょうか。もちろん、変わらなければいけないわけではないのですが。

オリンピックの後には健康危機対応がどうであったのかを、次の開催国などを交えて議論するAfter Action Reviewという会合が行われます。日本での取り組みを紹介するよい機会ですので、良好な事例などもまとめる必要があります。

オリンピックでの対応は論文としても掲載されやすい傾向にあります。ロンドンオリンピックは特に多くの論文が掲載されました。情報の管理などが厳しいですが、もし何か皆さんがデータにアクセスできるようであれば、きちんとした手順で論文化をし、次回のパリでのオリンピックなどにバトンをつないではいかがでしょうか。

和田耕冶(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[東京オリンピック・パラリンピック]

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