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【識者の眼】「在宅医療と救急医療は隣り合わせ」太田祥一

No.4995 (2020年01月18日発行) P.60

太田祥一 (医療法人社団親樹会 恵泉クリニック院長)

登録日: 2020-01-20

最終更新日: 2020-01-14

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私は大学卒業直後から約30年、主に大学で、救急医学の臨床(初期診療、集中治療)、研究(蘇生法や災害医学等の教育普及、内視鏡的止血、Rapid Response System、外傷の診断や非手術的止血、生体への侵襲等)、教育(医師、看護師、救急救命士、救急隊他の医療従事者の卒前卒後教育:外傷初期診療JATEC、内科救急JMECC、救急外来トリアージJTAS等、一般市民はもちろん、子供、スポーツや職場での蘇生法や応急手当普及)等に取り組んできた。救急は社会との接点が広く、#7119、災害医療コーディネーターや東京DMATの運営等行政の仕事に関わる機会にも恵まれ、学会では理事も経験し、ERの検討、広報、学生研修医への救急医学普及等に関わり、救急一筋に、幅広く関わってきた。

2000年に入り介護保険が導入された頃から、在宅医療下、施設入居の高齢者の3次救急搬送が増えてきた。高齢者の多くは病院前のトリアージでは重症とされるが、救命救急センターでは積極的治療を希望されないことが少なくなく、現場ではどう診療すれば良いのか戸惑いがあり、この現状と対策については論文他で発信してきた(https://www.dtod.ne.jp/critical_care/article12.php)。高齢化が進むにつれてこの傾向はどんどん進み、これからの時代に求められる救急医療や超高齢社会での医療、医師の役割を考えるようになり、今までの逆から、つまり、地域から救急医療を見ることが大事だと考えるようになり、5年ほど前から在宅かかりつけ医を目指し、実践し始めた。

このような課題を検討するために日本在宅救急医学会も設立された。在宅医療と救急医療とは、かけ離れた、正反対の関係にあると言われることが多い。しかし実際は、①ドクターカーやドクターヘリと同じように、病院前医療であり、地域でのメディカルコントロール(医学的質の担保)が求められている。②臓器別ではなく全身を診る総合診療で、内科的な知識とともに外科的な手技も必要とされる。快適な生活のために緩和医療、悪化時等に急いで対応すること、これは広い意味での救急医療が求められている。③病気を診るだけではなく、精神面、生活面、家族他周囲へのサポート、配慮等幅広い対応が求められる。④救急医は積極的に救命、蘇生してきた結果、最終段階での医療・看取りの経験が多く、そのもとで、これからの多死社会での看取りの医療を考えられる。⑤24時間対応で、多職種連携、チーム医療が不可欠で社会との接点も多く、そのために多文化コミュニケーションが必要で、ファシリテーターとしての役割が求められている─等々、実はとても親しい、隣り合わせの関係であることに気づいた。

在宅医と救急医が地域のなかで救急隊とともに、もっと近づき、お互いに想いを馳せて協働できれば、地域包括ケアシステムがさらに発展できるかもしれない。専門分化された今の医学、医療のなかで救急医療も在宅医療も患者の立場に立った医の原点であること、これが最も親しいことだと思う(https://cocomedica.jp/interview18/)。

太田祥一(医療法人社団親樹会 恵泉クリニック院長)[超高齢社会][地域包括ケアシステム]

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