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口腔内カンジダの治療で注意すべきことは?

No.4984 (2019年11月02日発行) P.54

丹沢秀樹 (千葉大学大学院医学研究院口腔科学講座教授)

登録日: 2019-10-31

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胃内視鏡検査で口腔内カンジダを認めます。放置してよいのでしょうか。治療する場合,皮膚科的に爪白癬などの精査後,注意すべきことはありますか。ご教示下さい。(鳥取県 Y)


【回答】

【症状を引き起こさない程度にカンジダ菌の増殖を制御することが肝要】

真菌(カビ類)であるカンジダ菌がカンジダ症を引き起こします。健康な状態であってもカンジダ菌は口腔,消化管,腟などに生息しています。ところが,特定の条件下でカンジダ菌が過剰に増殖すると,粘膜や皮膚の深部に侵入して炎症を引き起こします。口の粘膜,鼠径部,脇の下,手足の指の間,包皮の被った陰茎,腟,乳房の下面,爪の根元,腹部の皺などに発症します。カンジダは,高温多湿,不良な衛生状態を好みます。きつくて蒸れやすい下着,おむつなどは避けなければなりませんので,特に小児や高齢者に配慮が必要です。免疫力(抵抗力)の低下する疾患,妊娠や肥満などの状況,皮膚などの健全な細菌叢を崩す抗菌薬,免疫抑制薬などに注意して下さい。

症状としては,舌の「ヒリヒリ感」や「苦味」,皮膚の荒れ,爪の根部の白色変化,指間部の糜爛(びらん),乳児の陰部周囲に生じる紅斑(「おむつかぶれ」に似ているので注意が必要)などです。カンジダ菌は上皮細胞と強く結合しますので,単に洗浄しただけでは除去できず,抗真菌薬を使用しなければなりません。抗真菌薬は他の薬剤と相互作用を引き起こしやすく,また,剤形も経口薬,クリーム,坐薬,貼付薬など多彩ですし,胃のpHによる吸収条件がある薬剤もありますので,しっかりとした服薬指導が必要です。

「伝染性」に関するご質問をよく受けますが,カンジダ菌は健康な状態でも粘膜や皮膚などに存在し,問題は起こさない菌です。ですから,特別に免疫状態が落ちていない人では,単にカンジダ菌が付着しただけでは発症しにくいのです。皮膚と皮膚,あるいは粘膜と粘膜が密接に擦れる部位と場合が一番伝染しやすくなります。このため,夫婦間,母子(乳幼児)間などでは「伝染」に気を付けて下さい。以上は「表在性のカンジダ症」ですが,血流などにより深部に菌が侵入すると「深在性真菌症」になります。診断が困難な上に初期治療が遅れると重症化して死に至ることがあります。

以上のことをよくご理解頂いた上でご質問を考えてみましょう。「口腔内カンジダ症が内視鏡で観察された」とだけ述べられていますので,口腔内にカンジダ菌が増殖している状態ではあるが,まだ疼痛や味覚障害などは発症していない状態と考えられます。カンジダ菌は口腔内常在菌ですから,完全に排除することは困難ですし,必ずしも必要ありません。大切なのは,症状を引き起こさない程度にカンジダ菌の増殖を制御することです。年齢や全身状態,さらには常用薬などによっては,とりあえず一度抗真菌薬による除菌を行うほうがよいかもしれません。ただ,一番大切なのは,口腔内のお手入れです。口腔内粘膜も含めた清掃と粘膜の保護(粘膜は乾燥すると弱くなりますので適度な保湿が重要です)の継続が必要です。

【参考】

▶ 上川善昭:日口腔ケア会誌. 2010;4(1):17-23.

▶ 山崎 裕:口腔内科学. 永末書店, 2016, p352-8.

【回答者】

丹沢秀樹 千葉大学大学院医学研究院口腔科学講座教授

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