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(2)成年後見制度利用促進の理念と「本人情報シート」の活用[特集:かかりつけ医のための成年後見診断書作成術[第1部]]

No.4977 (2019年09月14日発行) P.26

山本繁樹 (社会福祉士/精神保健福祉士)

登録日: 2019-09-17

最終更新日: 2019-09-11

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1. 「本人情報シート」導入の経過

1 成年後見制度の必要性

成年後見制度は,ノーマライゼーション,自己決定権の尊重等の理念と,本人保護の理念との調和の観点から,精神上の障害により判断能力が不十分であるために契約等の法律行為における意思決定が困難な人について,成年後見人・保佐人・補助人がその判断能力を補うことによって,その人の生命,身体,自由,財産等の権利を擁護するという制度趣旨のもと,国民にとって利用しやすい制度とすることをめざして導入された1)

2000年の介護保険制度の導入は,周知の通り行政による措置制度から契約制度への移行でもあった。契約制度への移行は財産管理や契約行為への支援を必要とする人への公的サポートを必要とする。介護保険制度運用の車の両輪としても,民法改正による成年後見制度,および社会福祉事業として導入された日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)が活用されてきた。今後,認知症高齢者の増加や単独世帯の高齢者の増加が見込まれる中,成年後見制度の利用の必要性はさらに増大していくと考えられる。

2 成年後見制度の諸課題

成年後見制度については,①その利用者数は認知症高齢者等の数と比較して著しく少ない,②社会生活上の大きな支障が生じない限り,あまり利用されていない,③第三者が後見人になるケースの中には,意思決定支援や身上保護等の福祉的な視点に乏しい運用がなされているものもある,④後見等の開始後に,本人やその親族,さらには後見人を支援する体制が十分に整備されていない,といった諸課題が指摘されていた1)

2016年には議員立法で「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が成立し,2017年3月に閣議決定された成年後見制度利用促進基本計画では,「本人の意思決定支援や身上保護等の福祉的な観点も重視した運用とする必要」が示され,医師が診断書等を作成するにあたっても「福祉関係者等が有している本人の置かれた家庭的・社会的状況等に関する情報も考慮できるよう,診断書等の在り方についても検討するとともに,本人の状況等を医師に的確に伝えることができるようにするための検討を進める」「地域連携ネットワークにおけるチームに医師も参加し,診断書等を作成した後の情報提供を受けることによって,継続的な本人支援に関わることができるよう配慮すべきである」1)ことが示された。

3 本人情報シートの導入と可能性

成年後見制度利用促進基本計画における指摘もふまえ,最高裁判所において日本医師会,日本社会福祉士会,日本精神保健福祉士協会等の関係団体からの意見を聴取,協議するなどの検討が進み,診断書の書式を改定するとともに,本人を身近で支援する福祉関係者が本人の日常生活や社会生活の状況に関する情報を記載する「本人情報シート」の書式が新たに作成,導入された。本稿では,成年被後見人等の個人の尊厳の尊重,意思決定支援,財産の管理のみならず身上の保護が適切に図られるべき,といった成年後見制度利用促進の理念をふまえ,「本人情報シート」の活用と今後の可能性について述べる。

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