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喉頭疾患に対するbFGF注入療法

No.4969 (2019年07月20日発行) P.57

倉上和也 (山形大学耳鼻咽喉・頭頸部外科)

登録日: 2019-07-22

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【加齢性音声障害にも効果が期待される新たな治療法】

音声障害を伴う喉頭疾患は,声帯ポリープ,声帯結節,ポリープ様声帯,声帯麻痺,声帯溝症,声帯萎縮,乳頭腫などの良性腫瘍,喉頭癌など多岐にわたる。声帯ポリープなどの良性腫瘤に対しては喉頭微細手術が,一側性声帯麻痺の音声改善には喉頭形成術や脂肪注入術など種々の手術が有効である。しかしながら,声帯萎縮は加齢性の生理的変化であることも多く,治療手段に乏しいのが現状である。高齢化が進む中で,今後も声帯萎縮による音声障害に悩む患者が増加することが予想され,効果的な治療の模索が喫緊の課題である。

近年,声帯萎縮や声帯麻痺に対して,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の注入療法が有効であるとの報告がなされている1)。bFGFは,わが国では以前より褥瘡などに臨床使用されている製剤であるが,声帯内注入は適応外使用となる。当科では院内倫理審査の承認を受け,臨床研究としてbFGF声帯内注入を行っている。音声治療で十分な効果が得られない声帯萎縮や声帯溝症,軽微な一側性声帯麻痺症例を対象とし,十分な説明を行い同意が得られた症例にのみ施行している。本治療は,通常の診察ユニットでの喉頭麻酔後に処置用ファイバー観察下に注入針を用いて施行することが可能であり,簡便かつ安全な治療である。当科では2016年から声帯萎縮症例を中心にbFGFの注入を行っており,自覚的な音声改善が得られている。今後もさらなる基礎研究と臨床データの蓄積が期待される治療法であると考えられる。

【文献】

1) Kanazawa T, et al:Acta Otolaryngol. 2017;137 (9):962-7.

【解説】

倉上和也 山形大学耳鼻咽喉・頭頸部外科

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