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【医院建築探訪(7)〈桐村医院 (神奈川・川崎市)〉】医療機関らしくない佇まいと和室でくつろげるクリニックを目指しました

No.4958 (2019年05月04日発行) P.14

登録日: 2019-04-26

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石造りの円形エントランスと清潔感のある外壁がスタイリッシュな印象を与える桐村医院の外観

医院併用住宅の建築は、クリニックの機能性と住まいの快適さを高い次元で両立することが求められる。そのため建築業者を選ぶ際には、医療にとどまらず、法律や煩雑な行政手続き、デザイン、インテリアに至るまでの幅広い知識と豊富な経験が備わっているかが重要になる。本連載の最終回は、医療専門チームを有するハウスメーカーの提案で、院長の潜在的なニーズを具現化したクリニックの実例を紹介する。

神奈川県川崎市にある桐村医院は、1955年の開業以来、地元に密着したかかりつけの医療機関として地域医療を提供してきた。住居も兼ねていた以前の4階建てのクリニックは、施設や機器の老朽化が目立つようになり、初代院長の父とともに外来を担当していた桐村拡明さん(写真)は2006年、自身の2代目院長就任を見据え、全面リニューアルを決意。多忙なスケジュールの合間を縫って計画を進めたために、プランニングに約2年を費やし、2008年に新院と新居が完成した。

スタイリッシュな外観でランドマーク的存在に

「できるだけ医療機関らしさを控えて、佇まいの良さで目立ちたい」という桐村さんの要望を踏まえて設計された桐村医院の外観は、大きな看板を設置せず、クリニックには見えないスタイリッシュかつ威風堂々とした姿が印象的。直線を強調したモダンな躯体をベースに、先代院長のこだわりから設けた円形の石のタイル張りのエントランスがアクセントとなっており、周囲のランドマーク的存在になっている。

1階のクリニック部分で特徴的なのは、落ち着いたインテリアと程よい採光が心地良い受付・待合室スペースと、その奥に設けられた和室(右頁写真1、2)。ダークグレーの琉球畳を使用したモダン和室で、掘りごたつがあり、患者は診察までの待ち時間をくつろいで過ごすことができる。

「少しでもリラックスしてほしいという思いから和室を作りました。高齢の患者さんにとってはコミュニケーションの場になっているようです。子供連れの患者さんからは『和室で子供を遊ばせることができるので落ち着いて問診表を記入しやすい』という声もいただいています」(桐村さん)

機能面では、患者とスタッフが交わらないよう直線的な動線を並行に確保し、スムーズな院内移動が可能となっている。クリニック部分の面積は200㎡以上あり、処置室にはベッドを8台設置。時間のかかる点滴も積極的に行っている。内視鏡やX線検査といった検査室も備えるなど、高齢者が多い地域のニーズにかかりつけ医として対応することができる医療施設となっている。

決め手はデザイン性に富んだ建築プラン

桐村医院の設計・建設を手掛けたのはハウスメーカーのダイワハウス(https://www.daiwahouse.co.jp/jutaku/lifestyle/medical/index.html)。ダイワハウスでは医院併用住宅の顧客に対し、医療専門スタッフと営業担当者、建築士、インテリアコーディネーターからなる「Team-xevo(チーム ジーヴォ)」がサポートする仕組みをとっている。標準仕様となっている「外張り断熱通気外壁」などハウスメーカーならではの快適な空間づくりのノウハウと、数多くの医療施設を建設した実績を兼ね備えた総合力が強みだ。

桐村さんが複数のメーカーの中からダイワハウスをパートナーに選んだ決め手は、趣味の車を2台収容可能な広い地下駐車場と地上3階建てを可能とする、デザイン性に富んだ建築計画だった。

「大きな地下駐車場がある建物はゼネコンのRC(鉄筋コンクリート)造りでないと難しいのかなと思い込んでいましたが、ダイワハウスさんの提案で鉄骨でも可能なことが分かりました。コストも工期も抑えることができる上に、注文住宅なのでこちらのこだわりにも柔軟に対応してもらえる設計の自由度も嬉しかったですね」

20回を超える打ち合わせで理想の空間に

クリニック部分に関しては、桐村さんの求める機能やイメージをダイワハウスの担当者や設計士がくみ取り、診療スタイルを踏まえ、図面に落とし込んだ。「私の漠然とした要望をしっかり形にしてもらいました」(桐村さん)

自宅部分にもとことんこだわった。地下駐車場へのアプローチ(写真6)や家族の和みの場となる明るく広いリビング(写真7)、湯量1000ℓという住宅では最大級の浴槽、内装の材質やカラーに至るまで、仕様を決めるためのダイワハウスの担当者との打ちあわせは20回を超えた。

桐村さんは契約から引き渡しに至るまでのダイワハウスの対応についてこう語る。「打ち合わせの翌週には、図面やサンプルなどの資料を添えて新しい提案を持ってきてくれるスピード感には驚きました。そうした打ち合わせを重ねていくことで信頼感が強まっていきました」

工事の途中では、地下水の排出に悩まされる場面もあったが、大規模建築で培われたダイワハウスの優れた土木技術によってハードルをクリアし、計画通りに工事は進んだ。その結果、家族がくつろげる快適な2世帯住宅と、理想の医療を提供するクリニックが同時に実現した。

地域の患者さんの“健康の窓口”でありたい

新院竣工から10年以上が経過し、大学病院で消化器専門医のキャリアを積んだ桐村さんは、患者一人一人に対する丁寧な診療で、先代が築いたかかりつけ医としての信頼をしっかりと引き継いでいる。

「開業医として心がけているのは、地域の患者さんがいつでも相談できる“健康の窓口”になるということです。そのためには通いやすいクリニックであることが大切だと思います。高齢の患者さんのニーズに合わせ、内科診療だけでなく低周波電気治療器やレーザー治療器、ウォーターベッドなどの機器を導入しているのもそうした理由からです。親しみやすい外観とくつろげる空間で、患者さんに寄り添った医療をこれからも提供していきたいと考えています」

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