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(1)がん疼痛緩和におけるモルヒネの役割─作用機序と使用法,副作用対策[特集:意外に知られていない モルヒネによる痛み治療の問題点と実際]

No.4956 (2019年04月20日発行) P.18

山代亜紀子 (洛和会音羽病院緩和ケア内科副部長)

登録日: 2019-04-22

最終更新日: 2019-04-17

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モルヒネは複数のオピオイド受容体に作用する鎮痛薬である。代謝経路より腎機能障害時には注意が必要である

モルヒネはわが国で最も剤形が豊富で様々な投与経路を選択でき,患者の病態,状況に対応しやすい薬剤である

生じる可能性のある副作用を患者に説明し,対策しておくことが重要である

1. 疼痛コントロールの第一選択薬・モルヒネ

緩和ケアの普及とともにがん領域におけるオピオイド鎮痛薬を中心とした疼痛コントロールの技術は飛躍的に進歩し,多くの患者がその恩恵を受けている。わが国でも新しいオピオイド鎮痛薬が次々と使用可能となり,その選択の幅が広がっている。

モルヒネは最も古くからあるオピオイド鎮痛薬であるが,いまだに多くが「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」で第一選択薬として推奨され広く使用されている。本稿では,モルヒネの作用機序,有効な使用法とその注意点を述べる。

2. モルヒネの作用機序と代謝

モルヒネは1804年に,ケシから,ドイツの薬剤師フリードリヒ・ゼルチュルナーが分離させたベンジルイソキノリン型アルカロイドの一種で,チロシンから生合成されるオピオイド系の化合物である。体内ではオピオイド受容体(μ,δ,κ)に作用する。その強力な鎮痛・鎮静作用は,主にμオピオイド受容体を通じて発現する。オピオイド受容体を介した鎮痛作用は,侵害受容器で発生した痛みを伝える脊髄,中枢での上行性痛覚情報伝達系の抑制に加え,下行性抑制系を賦活することにより生じる。また,オピオイド受容体は,体内に広く分布し,中枢での情動制御や呼吸抑制,催吐作用,末梢での消化管運動抑制作用にも関わり,これによりモルヒネの副作用である悪心・嘔吐や便秘,身体的・精神的依存の問題が起こる。

さらに各オピオイド受容体にはサブタイプがあり,その特徴と発現部位を示す(表1)1)。経口投与されたモルヒネは主に小腸で吸収される。生体内利用率は約19~47%(平均25%)とばらつきが大きい。肝臓でグルクロン酸抱合を受け,44~55%がM-3-G(morphine-3-glucuronide)に,9~10%がM-6-G(morphine-6-glucuronide)に代謝され,8~10%が未変化体として尿中に排泄される。M-3-Gには鎮痛作用はないが,M-6-Gはモルヒネ未変化体の3~10倍の鎮痛・鎮静作用を持つ。M-3-G,M-6-Gはともに尿中に排泄され,半減期はそれぞれ16時間,12時間である。静脈投与の場合は門脈を通るが,グルクロン酸抱合を受けるモルヒネは一部であるため,M-6-Gの生成は減少する。このため,悪心,眠気などの副作用を軽減できることがある1)

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