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がん患者遺族の診療で気をつけたいことは「うつ病」の可能性:遺族外来の現場から

No.4952 (2019年03月23日発行) P.53

石田真弓 (埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター精神腫瘍科講師)

大西秀樹 (埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター精神腫瘍科教授)

登録日: 2019-03-23

最終更新日: 2019-03-18

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【安易に死別反応と判断せず,うつ病を見逃さないことが重要】

死別はストレスフルなライフイベントである。多くの遺族は当初は悲しみ,不安,不眠などの精神症状を呈するが,その後は,自然に回復し日常生活へと復帰していく。しかし,一方で精神面・身体面での不調を訴える遺族も少なくない。死別ストレスに関連して,死亡率上昇,心疾患や高血圧など新たな身体疾患の罹患や既往症の悪化,うつ病などの精神疾患罹患率や自殺リスクの上昇,飲酒・喫煙などの行動変化などが指摘されている。しかし,受診時に死別との関連性を訴えることが少なく,見逃されやすい。

当院では,がんで愛する家族を亡くした遺族を対象に「遺族外来」を開設し,これまでに300人以上が受診している。遺族を診療する際に注意すべき点として,うつ病を見落とさないことが最も重要で,遺族外来では初診時約4割が「うつ病」と診断されている1)。遺族のうつ病は,その症状が故人を思い出させるエピソードと関連していたり,抑うつ気分や興味・喜びの減退,不眠など,死別後に生じる反応と似ているため,注意を要する2)。死別をきっかけにしたうつ病でも,抗うつ薬による治療が可能であり,症状の改善は図られる。つまり,安易に死別反応と判断し,うつ病の治療を行わないことは遺族を苦しめることにもつながる。

【文献】

1) Ishida M, et al:Jpn J Clin Oncol. 2011;41(3): 380-5.

2) Ishida M, et al:Palliat Support Care. 2010;8(1): 95-8.

【解説】

石田真弓*1,大西秀樹*2  埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター精神腫瘍科 *1講師 *2教授

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