株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

ヒルシュスプルング病モデルマウスを用いた基礎研究

No.4946 (2019年02月09日発行) P.50

藤原なほ (順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科)

登録日: 2019-02-09

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【発症メカニズムの解明,予防薬・治療薬の開発等,新たな知見が得られることに期待する】

ヒルシュスプルング病(H病)は新生児期から便秘症状を呈する小児外科疾患で,出生5000人に1人の頻度で発症する。腸管神経系を構成する大部分の細胞は,神経堤由来細胞が消化管に侵入し,口側腸管から肛門まで移動しながら増殖・分化し,ネットワークを形成していく。この過程で異常が起こると,肛門側の神経系が欠落し無神経節腸管となるため機能的腸閉塞をきたす。

病態解明のためのモデルマウスは,以前は突然変異誘発性,薬剤誘導性,外科処置等によるものが一般的であった。ゲノム解析技術が格段に進展した現在,ノックアウト,トランスジェニックマウスなどの遺伝子改変マウスを用いた分子生物学的なアプローチが本症の病態解明に大きな役割を担っている。ヒトH病の遺伝子異常として報告されているGDNF-RET-GFRα1系では,いずれの遺伝子異常でもマウスはH病と類似した病態になることが報告されている。また,血管収縮因子endothelinのうち消化管に有意に機能するED3と,その受容体であるEDNRBを含むED3-EDNRB-ECE1系でもヒトH病の病型と酷似した表現型を呈している1)

これらモデルマウスを用いた基礎研究の発展により,H病発症メカニズムの解明,さらには外科的治療が必須となる本症に対し予防薬・治療薬の開発など,今後新たな知見が得られることを期待する。

【文献】

1) Zimmer J, et al:Pediatr Surg Int. 2015;31(9): 787-94.

【解説】

藤原なほ 順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科

関連記事・論文

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top