医師偏在対策を目的に昨年改正された医師法・医療法のうち、臨床研修病院に関する省令案を厚生労働省の医道審議会医師臨床研修部会が1月31日、了承した。権限が国から都道府県に移譲されることに伴い、臨床研修の質にバラツキが生じたり、都道府県が恣意的な運用を行わないよう規定を設ける。
改正法により、2020年度から臨床研修病院の指定、研修医の募集定員の設定権限が国から都道府県へ移譲される。
同日の部会で厚労省は、都道府県が臨床研修病院の指定を行った場合や募集定員の設定を行うにあたり、厚労省に通知する規定を整備することや、これまで国が実施主体だった実地調査について、20年度以降は都道府県を実施主体とするものの、病院の同意を得れば厚労省も実地調査を行うことを可能とし、その内容を国と都道府県が相互に通知するなどの省令案を提案した。
これは、同部会において「都道府県ごとに運用が任されると、臨床研修や研修医の質にバラツキが生じないか」「臨床研修病院の指定に当たり、恣意的な運用があった場合等の対応が必要ではないか」との懸念を踏まえたもの。
部会は省令案を了承したものの、都道府県の運用に対する根強い懸念が表明された。吉田学医政局長は、国は地方自治法により都道府県に対する勧告や是正要求の権限を有することを紹介しながらも「日々の運用の中で委員の危惧に対応できる仕組みを考えたい」と述べ、理解を求めた。
同日はこのほか、通常の卒後臨床研修マッチング参加登録開始前に、地域枠学生に限定した募集・選考が可能になる「地域密着型臨床研修病院」の認定基準の省令案を了承した。「医師少数区域における地域医療の研修が12週以上であり、臨床研修修了後も総合的な診療の研修が受けられる体制」などとする。地域密着型臨床研修病院は2020年度末に認定され、21年5月に研修医の募集・採用決定、22年4月研修開始となる。