【サルコイドーシスの病態には,免疫寛容機構の破綻が深く関与している】
サルコイドーシスとIMIDsの臨床像が類似すること,合併頻度が高いこと,が指摘されてきた。近年,両者に共通する遺伝的素因として,HLA class Ⅱ領域とBTNL2遺伝子を含む第6染色体短腕上の6p21.3領域,さらにIL-23/IL-12シグナル伝達経路に関連する遺伝子座の遺伝子変異/多型が注目されている1)。これらはTh1・Th17細胞の抗原処理能や制御性T細胞の免疫制御能に影響し,疾患感受性を形成すると考えられる。
筆者らは自治医科大学で約40年間に蓄積した588症例の診断時年齢分布を解析した。近年,20歳代の発病頻度が低下し,外的環境リスク要因の減少が推定されること(衛生仮説)2),45歳以上の女性の高い発病頻度は時代によらず一貫しており,内的環境リスク要因(卵巣ホルモン減少等)の存在が示唆された。さらなるリスク要因の候補にTNF阻害薬使用,活性型ビタミンD欠乏,虫垂切除/扁桃摘出等が抽出された。いずれもTh1型免疫反応と免疫制御機構のバランス異常をきたしうるもので,多発性硬化症を含む一部のIMIDsで挙げられているリスク要因の候補と共通していた。サルコイドーシスは「経気道的に侵入した外来抗原に対する処理能力の低下とともに免疫寛容機構の破綻が深く関与している病態」と考えられる3)。
【文献】
1)Fischer A, et al:Am J Respir Crit Care Med. 2015; 192(6):727-36.
2)Sawahata M, et al:Respir Med. 2015;109(2):272-8.
3)Sawahata M, et al:Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis. 2016;33(2):112-6.
【解説】
澤幡美千瑠*1,萩原弘一*2 自治医科大学呼吸器内科 *1講師 *2教授